効率性分析とは?主要指標の計算方法・分析手順・経営改善への活用法

企業経営では、保有する資産をどれだけ効率よく活用して売上や利益につなげているかを把握することが重要です。効率性分析は、資産の活用度を回転率などの指標で評価し、経営改善の手掛かりを得るための財務分析手法です。
本コラムでは、代表的な指標の計算方法から、分析の進め方、経営改善への活用例まで解説します。
効率性分析とは?経営効率を測る重要指標

効率性分析とは、企業が保有する資産をどれだけ効率的に活用して、売上高などの成果につなげているかを分析する手法です。定期的に分析することで、自社の資産活用上の強み・弱みを把握し、経営改善の具体策を検討できます。
効率性分析で確認したい4つの主要指標

効率性分析では、企業の資産活用度をさまざまな角度から評価するために、複数の回転率が用いられます。本記事では、そのうち総資産回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、仕入債務回転率の4つを中心に解説します。このほか、固定資産回転率なども資産の効率性を確認する指標として用いられます。
総資産回転率(総資本回転率):資産活用の総合評価
総資産回転率(総資本回転率)は、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に活用して売上を生み出しているかを示す指標です。
総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
総資産回転率が高いほど、同じ資産規模からより多くの売上を生み出していることを示します。
ただし、業種によって資産構成が異なるため、同業種や自社の過去推移と比較して評価することが重要です。
売上債権回転率:債権回収の効率性を測る
売上債権回転率は、売掛金や受取手形などの売上債権がどれだけ速く回収されているかを示す指標です。
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
売上債権回転率が高いほど、売上債権の回収が速い傾向を示します。ただし、適正な水準は取引条件や業界慣行によって異なるため、一律の基準だけで判断せず、同業種平均や自社の過去推移と比較することが重要です。
棚卸資産回転率:在庫管理の効率性をチェック
棚卸資産回転率は、在庫(商品や原材料など)がどれだけ効率的に販売・使用されているかを示す指標です。
棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産
棚卸資産回転率が高いほど、在庫が効率的に回転している傾向を示します。なお、棚卸資産回転率には売上高を用いる方法と売上原価を用いる方法があるため、企業間・時系列で比較する際は計算方法をそろえる必要があります。
仕入債務回転率:支払いサイクルを確認する
仕入債務回転率は、買掛金や支払手形などの仕入債務が一定期間にどの程度回転しているかを示し、仕入れから支払いまでの状況を確認する指標です。
仕入債務回転率 = 仕入高 ÷ 仕入債務
仕入債務回転率が高いほど支払いまでの期間が短く、低いほど長い傾向を示します。ただし、単純に高い・低いだけで良否を判断するのではなく、契約上の支払条件、取引先との関係、適用法令を踏まえて評価する必要があります。仕入高が把握できない場合は、売上原価を用いて分析することもあります。
※上記の回転率は、分かりやすさを優先して期末残高を用いた基本式を示しています。より厳密に分析する場合は、期首と期末の平均残高を用いることがあります。比較分析では、どちらの方法を使う場合でも計算条件をそろえることが重要です。
効率性分析に関連する指標

前節で紹介した4つの指標に加えて、回転日数・CCCやROAなどを確認すると、資金の回収・支払いに要する期間や収益性との関係まで分析できます。これらは前節の4つの指標とは性格が異なり、効率性分析を補完する関連指標として活用します。
回転日数とCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)
売上債権・棚卸資産・仕入債務は、回転率だけでなく「何日分に相当するか」という回転日数で確認すると、資金がどのくらいの期間滞留しているかを把握しやすくなります。
- ●売上債権回転日数 = 売上債権 ÷ 売上高 × 365日
- ●棚卸資産回転日数 = 棚卸資産 ÷ 売上高 × 365日
- ●仕入債務回転日数 = 仕入債務 ÷ 仕入高 × 365日
これら3つを組み合わせた指標がCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)です。CCCは、仕入れなどで資金を支出してから、売上代金を回収するまでに要する期間の目安を示します。
CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 - 仕入債務回転日数
一般にCCCが短いほど、事業活動に投入した資金を早く回収できていると考えられます。ただし、業種や取引条件によって水準は異なるため、自社の過去推移や同業種と比較して評価します。また、回転日数についても平均残高を用いる方法があるため、比較時は計算定義をそろえましょう。
参考:経済産業省「FinTech導入による地域企業の収益力向上度測定指標の在り方に関する調査検討事業 調査報告書」
総資産回転率とROAの関係
総資産回転率と関連する指標として、ROA(Return On Assets:総資産利益率)があります。総資産回転率が「保有する資産からどれだけ売上を生み出したか」を示すのに対し、ROAは「総資産からどれだけ利益を生み出したか」を示す指標です。
当期純利益を用いるROAは、次のように売上高当期純利益率と総資産回転率に分解できます。
ROA = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率
そのため、総資産回転率が高くても、売上高当期純利益率が低ければROAが高いとは限りません。効率性だけで企業の経営状態を判断せず、収益性もあわせて確認することが重要です。なお、ROAは分析目的によって営業利益や経常利益などを用いる場合もあるため、比較時には定義を確認しましょう。
効率性分析の実践ステップ

ここまで説明した指標を実際の分析に活用するため、基本的な進め方を4つのステップに整理します。
STEP1 必要な財務データを準備する
まず、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などから、分析に必要なデータを収集します。主なデータと用途は次のとおりです。
| 必要なデータ | 主な出所 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 売上高 | 損益計算書 | 総資産・売上債権・棚卸資産の各回転率 |
| 総資産 | 貸借対照表 | 総資産回転率 |
| 売上債権 | 貸借対照表(受取手形・売掛金など) | 売上債権回転率・回転日数 |
| 棚卸資産 | 貸借対照表(商品・製品・原材料など) | 棚卸資産回転率・回転日数 |
| 仕入債務 | 貸借対照表(支払手形・買掛金など) | 仕入債務回転率・回転日数 |
| 仕入高・売上原価 | 損益計算書・原価明細等 | 仕入債務回転率・回転日数など |
| 当期純利益等 | 損益計算書 | ROAなどの収益性確認 |
関連記事:損益計算書の見方とは?5つの利益と分析ポイントをわかりやすく解説
STEP2 効率性指標を計算する
収集した財務データをもとに、総資産回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、仕入債務回転率を計算します。必要に応じて回転日数やCCCも算出します。各指標の計算式は前章で確認したとおりです。
企業間や年度間で比較する場合は、同じ計算方法を継続して使用することが重要です。平均残高を使うか期末残高を使うか、棚卸資産回転率の分子に売上高と売上原価のどちらを使うかなど、計算条件をそろえましょう。
STEP3 過去実績や同業種と比較する
効率性指標は、単独の数値だけでは良し悪しを判断しにくいため、比較によって評価します。まず自社の過去推移を確認し、次に同業種の平均値などと比較すると、変化や相対的な位置づけを把握しやすくなります。
- ●経年比較:自社の過去数年の推移と比較する
- ●業界比較:同業種の平均値や同業他社と比較する
- ●計画比較:事業計画や予算上の目標値と実績を比較する
- ●社内比較:部門や拠点、グループ会社間で比較する
比較する際は、対象年度、企業規模、会計方針、指標の計算定義が異ならないかにも注意します。
STEP4 変化の原因を掘り下げる
比較によって指標の悪化や変化が見つかったら、関連する財務項目を確認して原因を掘り下げます。例えば、総資産回転率が低下した場合は、売上高が減少したのか、総資産が増加したのかを確認し、総資産が増えている場合は売上債権、棚卸資産、固定資産など、どの項目が増加したのかを確認します。
- ●売上債権が増えている → 回収条件や入金遅延を確認する
- ●棚卸資産が増えている → 過剰在庫や販売鈍化を確認する
- ●固定資産が増えている → 設備投資後の稼働状況や売上への寄与を確認する
必要に応じてROAや売上高利益率などの収益性指標も確認し、資産の効率性だけでなく、その活動が利益につながっているかをあわせて分析します。
効率性分析は一度行って終わりではありません。月次・四半期・年度など、自社に適した周期で同じ指標を継続して確認し、変化を把握することが重要です。
効率性分析から見る経営課題と改善策

効率性分析を通じて明らかになった課題に対して、どのような改善策を講じることができるのでしょうか。ここでは、効率性指標ごとに具体的な改善策を解説します。
資産活用の効率化:遊休資産の活用と整理
総資産回転率が低い場合、資産が効率的に活用されていない可能性があります。使用頻度の低い土地・建物・設備などの遊休資産について、売却や有効活用を検討しましょう。遊休資産を売却すれば総資産の圧縮や資金の確保につながり、資産効率の改善が期待できます。
また、レンタルやアウトソーシングなどを活用し、必要な経営資源を保有せずに利用する「アセットライト(持たざる経営)」も選択肢の一つです。なお、リースについては会計基準により使用権資産・リース負債が貸借対照表に計上される場合があるため、「リースを使えば必ず総資産を抑えられる」とは限りません。
関連記事:新リース会計基準とは?企業に与える影響や必要な準備をわかりやすく解説!
売上債権回収の最適化:与信管理と回収プロセス
売上債権回転率が低い場合は売上債権の回収に時間がかかっている可能性があるため、与信管理体制や回収プロセスを確認しましょう。新規取引先との取引開始前に信用調査や財務分析を行い、既存取引先についても定期的に信用状況や入金状況を確認することが重要です。
また、請求書の発行タイミングや請求・入金確認の業務フローを見直し、回収遅延を早期に把握できる体制を整えます。取引条件の見直しが可能な場合は、取引先との協議のうえで回収サイトの短縮を検討することも、資金効率の改善につながります。
在庫管理の効率化:適正在庫と発注点管理
棚卸資産回転率が低い場合、販売量に対して在庫が過剰になっている可能性があります。商品別の販売実績や在庫量を確認し、適正在庫と発注点の見直しに取り組みましょう。
発注点管理とは、在庫があらかじめ設定した基準値(発注点)まで減少した段階で追加発注を行う管理手法です。平均販売量、調達に必要な期間、安全在庫などを考慮して発注点を設定することで、欠品と過剰在庫の双方を抑えやすくなります。
また、売上高や利益貢献度などに応じて商品を分類し、重要度の高い商品を重点的に管理する方法もあります。過去の販売データや季節性、市場動向も踏まえて需要予測を行い、在庫水準を継続的に見直しましょう。
支払い条件の確認:資金繰りと取引先関係
仕入債務回転率が高い場合、支払サイトが相対的に短い可能性があります。ただし、支払条件を長くすれば常に資金効率が改善するとは限りません。仕入価格の条件、取引先との関係、契約内容、適用法令などを含めて総合的に確認します。
支払条件を見直す場合は、自社の資金繰りだけを理由に一方的な変更を行わず、法令や契約条件の範囲内で取引先と十分に協議することが重要です。
なお、「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」の対象取引では、委託事業者は、製造委託等代金の支払期日を、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は中小受託事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める必要があります。対象となる取引では、法令上の支払期限を確認したうえで対応しましょう。
業種別に見る効率性分析のポイントとケーススタディ

効率性指標の見方は、企業が保有する資産や商流、取引条件によって変わります。ここでは代表的な3業種について、分析時の主な着眼点を整理したうえで、架空企業の数値を使って「指標の変化をどう読み取るか」を確認します。ケースに示す数値・企業は説明のために設定したもので、実在する企業の事例や実績ではありません。
なお、本ケースでは説明を簡潔にするため期末残高を使用しています。
製造業:設備投資と総資産回転率をどう見るか
【分析のポイント】
製造業では、生産設備などの固定資産や原材料・仕掛品・製品などの棚卸資産が大きくなりやすいため、総資産回転率だけでなく、設備投資の時期や稼働状況、在庫の増減もあわせて確認することが重要です。大型の設備投資を行った直後は、売上への寄与が本格化する前に総資産が増加し、総資産回転率が一時的に低下する場合があります。
| 項目 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12億円 | 12.5億円 |
| 総資産 | 10億円 | 14億円 |
| 総資産回転率 | 1.20回 | 約0.89回 |
【ケースの読み方】
架空企業A社では、売上高は増加しているものの、総資産の増加幅が大きいため総資産回転率が低下しました。総資産の内訳を確認すると、生産能力増強のための設備投資によって有形固定資産が増加しています。この場合、回転率の低下だけで「資産効率が悪化した」と判断するのではなく、設備の稼働率や生産量、設備投資後の売上・利益への寄与を継続して確認し、投資に見合った成果につながっているかを評価します。
小売業:在庫増加と棚卸資産回転率をどう見るか
【分析のポイント】
小売業では、棚卸資産の管理が資金効率に大きく影響します。棚卸資産回転率や回転日数を確認するとともに、季節商品や低回転商品の在庫、発注量、欠品とのバランスを確認します。在庫が増えていても、繁忙期に備えた計画的な仕入れであれば直ちに問題とはいえないため、増加の理由を切り分けることが重要です。
| 項目 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8億円 | 8億円 |
| 棚卸資産 | 1億円 | 1.6億円 |
| 棚卸資産回転率 | 8.0回 | 5.0回 |
【ケースの読み方】
架空企業B社では、売上高が横ばいである一方、棚卸資産が増加したことで棚卸資産回転率が低下しました。商品別に確認すると、季節商品と一部の低回転商品で在庫が増加しています。季節商戦に備えた一時的な在庫増加なのか、販売鈍化による滞留在庫なのかを確認し、後者が継続している場合には在庫管理上の課題が生じている可能性があると判断します。
サービス業:売上債権の回収期間をどう見るか
【分析のポイント】
サービス業では、棚卸資産をほとんど持たない業態も多く、売上債権の回収状況が資金効率を確認するうえで重要になります。売上債権回転率や回転日数を確認し、売上増加に伴う正常な債権増加なのか、契約条件の長期化や入金遅延によるものなのかを見極めます。なお、設備型・店舗型など資産を多く保有するサービス業では、総資産の構成もあわせて確認します。
| 項目 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6億円 | 6.3億円 |
| 売上債権 | 0.75億円 | 1.05億円 |
| 売上債権回転率 | 8.0回 | 6.0回 |
【ケースの読み方】
架空企業C社では、売上高は増加していますが、それ以上に売上債権が増えたため売上債権回転率が低下しました。取引先別に確認すると、一部で契約上の支払サイトが長期化し、入金遅延も発生しています。この場合は、単なる売上増加に伴う債権増ではなく、回収条件や入金状況に課題がある可能性を考え、取引先ごとの回収状況や信用状態を追加で確認します。
効率性分析を行う際の注意点

効率性分析は企業の資産活用状況を把握する有用な手法ですが、数値だけを機械的に評価すると誤った判断につながる可能性があります。主な注意点を確認しましょう。
比較条件をそろえる
効率性指標を比較する際は、できるだけ同業種・近い企業規模・同じ計算定義で比較することが重要です。同じ名称の指標でも、平均残高を使うか期末残高を使うか、棚卸資産回転率の分子に売上高と売上原価のどちらを用いるかなどによって数値が変わります。比較対象や計算条件が異なる場合は、その差を踏まえて解釈しましょう。
時系列分析の重要性
単年度の数値だけでは、一時的な変動なのか構造的な問題なのか判断しにくいため、複数年度の推移を確認することが重要です。
- ●トレンド:数年間の推移から改善・悪化の方向を確認する
- ●季節変動:繁忙期や閑散期による売上・在庫の変動を考慮する
- ●設備投資:大型投資の直後は総資産回転率が一時的に低下することがある
- ●外部環境:景気、為替、原材料価格などの影響を切り分ける
他の財務指標との総合的判断
効率性指標だけで企業の経営状態を判断することはできません。収益性、安全性、成長性、生産性などの指標と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
例えば、総資産回転率が高くても、売上高利益率が低ければ十分な利益を生み出せていない可能性があります。前述したROAや売上高利益率をあわせて確認することで、「資産を効率的に使えているか」だけでなく、「その活動が利益につながっているか」も評価できます。
| 分析カテゴリー | 主な指標 | 効率性分析とあわせて確認する観点 |
|---|---|---|
| 収益性分析 | 売上高利益率、ROA、ROE | 資産の活用が利益につながっているか |
| 安全性分析 | 自己資本比率、流動比率、固定比率 | 効率性の追求が財務の安定性を損なっていないか |
| 成長性分析 | 売上高成長率、総資産増加率 | 投資による資産増加が将来の成長につながっているか |
| 生産性分析 | 労働生産性、設備生産性 | 人員や設備を含めた経営資源を有効活用できているか |
関連記事:安全性分析とは?企業の財務健全性を評価する5つの重要指標
まとめ:効率性分析を経営改善に活かす

効率性分析は、企業が保有する資産をどれだけ有効に活用して売上につなげているかを把握し、経営課題の発見や改善につなげるための財務分析手法です。本記事で紹介した総資産回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、仕入債務回転率を中心に、必要に応じて回転日数・CCCやROAなどの関連指標も確認し、自社の過去推移や同業種と比較しながら変化の原因を掘り下げることが重要です。
また、業種によって資産構成や商流が異なるため、同じ指標でも着目すべきポイントは変わります。単年度の数値だけで良否を判断せず、業種特性や投資のタイミング、取引条件、他の財務指標も含めて総合的に評価しましょう。
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