与信コラム


売掛金が回収できないとどうなる? 回収できないケース別の対処法と未回収を防ぐ方法を紹介

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はじめに

売掛金の回収遅れは、資金繰り悪化や経営危機を引き起こす大きなリスクです。『なぜ売掛金を回収できない?』『どうすれば未回収リスクを防げる?』と不安を抱える経営者の方々も多いでしょう。


本コラムでは、売掛金回収に悩む方々に向けて、具体的な課題とその対処法を紹介。さらに、与信管理や早期対応の重要性を踏まえ、実践しやすい回収方法を解説します。


本コラムが、売掛金未回収リスクを抑え、安心して事業を進めるためのヒントになれば幸いです。


売掛金未回収とは?

売掛金未回収とは?

売掛金未回収は、資金繰りや経営判断に直結するリスクです。まずは全体像として、以下のポイントを押さえましょう。


  • 基本的な定義と背景
  • 売掛金未回収が経営に及ぼす影響

以下で、それぞれを詳しく解説します。


基本的な定義と背景


売掛金未回収とは、商品やサービス提供後も支払期日までに入金されていない状態を指します。中小企業ほどキャッシュフローへの影響が大きく、事前の信用調査、契約条件の明確化、定期的なモニタリングが重要です。


売掛金未回収が経営に及ぼす影響


未回収が続くと仕入や給与の支払いに支障をきたし、信用低下や関係悪化、財務悪化に直結します。早期把握と回収活動、与信ルールの運用徹底が欠かせません。


売掛金が未入金になる理由

売掛金が未入金になる理由

未入金の背景は一つではなく、事務的な要因から資金繰り・意図的な未払いまで幅があります。まずは、代表的なパターンを整理します。


  • 取引先のミスや支払い能力の低下
  • 意図的な未払いのケース

以下で、それぞれのケースを解説します。


取引先のミスや支払い能力の低下


請求処理の誤りや資金繰り悪化などで支払いが遅延・停止する場合があります。定期的な信用確認と、支払期日の明確化・フォローが有効です。


意図的な未払いのケース


先延ばしの常態化などが疑われる場合は、条件見直しや法的手段も視野に。交渉経緯の記録や専門家相談の体制を整えましょう。


売掛金が回収不能になった場合の対処法

売掛金回収不能ケース

売掛金の回収が遅れると、資金繰りが厳しくなるため早急な対応が求められます。売掛金が回収できない場合には、まず以下の対応をしましょう。


  • 取引を一旦停止する
  • 買掛金と相殺できないか検討する
  • 売掛金の契約書を確認する

それぞれの対処法について詳しく紹介します。


取引を一旦停止する


売掛金の回収が遅れたら、追加の出荷やサービス提供は一時停止します。未払いが続いた状態で取引を続けると、未回収リスクがさらに高まるからです。


信頼できる取引先であっても、支払いが完了するまでは新規の取引を控えましょう。未回収額が増えれば、自社の資金繰りにも影響し、経営リスクを抱える可能性があります。


なお、取引停止を伝える際は、事前に社内で対応方針を決め、冷静で誠実な説明を心がけましょう。そして、支払い計画や期日を再確認し、履行完了まで管理を徹底します。また、相手先の信用低下を察知するために、定期的な与信管理を行うことも重要です。


さらに、保証人の設定や担保の確保を検討すれば、リスク回避につながります。取引先が複数ある場合は、未払いの発生や遅延の傾向を把握し、早めに対応して損失を防ぎましょう。


買掛金と相殺できないか検討する


相手企業に対して買掛金があれば、売掛金と相殺し、未回収リスクを減らせます。未払い額が売掛金より少なくても、リスクを抑える効果があります。ただし、相手が倒産手続きに入ると、破産法や民事再生法で相殺が制限されるため注意が必要です。特に、倒産手続き開始後に発生した債権では相殺できない場合があります。


買掛金との相殺は、債権者が一方的に意思表示すれば成立しますが、契約内容や取引履歴の確認が欠かせません。契約書に相殺条項が含まれているかを確認し、必要なら契約の見直しを検討しましょう。また、双方の債権が相殺禁止事由に該当しないかを事前に確認するのも重要です。


相殺通知は必ず文書で行い、相殺契約書や相殺請求書を作成します。請求書には相殺前の金額、相殺額、相殺後の支払額を明記し、記録を保管します。さらに、書類の様式や記載方法は事前に取引先と調整しておくと、誤解やトラブルを防げます。


売掛金の契約書を確認する


売掛金回収では契約書の確認が基本です。支払い条件や期日、遅延時の利息、違約金などが正確に記載されているかを確認し、請求の根拠とします。契約書や発注請書は、買主が代金を承諾した重要な証拠です。


取引契約時に「期限の利益喪失条項」があれば、支払い遅延時に残額を一括請求できます。また「所有権移転時期」の確認も欠かせません。代金未払い時に商品を回収できるかが左右されるためです。支払期限や違約金の法的有効性は、弁護士に確認するのが安心です。契約内容を見直し、必要なら改善や追加を行いましょう。


売掛金回収の初期ステップ

売掛金回収の初期ステップ

売掛金の回収率を高めるためには、初期段階での迅速かつ丁寧な対応が重要です。具体的には、以下のようなステップを踏みましょう。


  • 請求書の再送・リマインドを行う
    支払期日を過ぎた場合は、まず請求書を再送し、支払期日や金額を改めて明確に伝えます。単純な確認漏れや事務ミスであるケースも少なくありません。

  • 電話やメールで状況を確認する
    入金が確認できない場合は、担当者へ連絡し、支払い状況や遅延理由を確認します。感情的にならず、事実確認を重視することが大切です。

  • 柔軟な支払いプランを提案する
    資金繰りの問題が判明した場合には、分割払いなど現実的な支払い方法を協議します。双方が合意できる解決策を模索しましょう。

  • 対応内容を記録・共有する
    やり取りの日時や内容は必ず記録し、社内で共有します。後の交渉や法的手続きに備えるためにも、証跡を残しておくことが重要です。

これらの初期対応を丁寧に行うことで、取引関係を維持しながら円滑な回収につなげることができます。


売掛金が回収不能になった場合のリスク

売掛金が回収不能になった場合のリスク

売掛金が回収できずに放置してしまうと、以下のようなリスクが生じます。


「消滅時効」による権利の完全喪失


売掛金の請求権には期限があります。2020年の民法改正により、原則として「支払期日から5年」が経過すると、時効によって請求権が消滅してしまいます。放置している間に相手方が「時効だ」と主張すれば、法的に1円も請求できなくなります。内容証明郵便を送るなどの手続きを行わない限り、単なる時間の経過によって回収できたはずの資産を完全に失うことになります。


他債権者による影響で自社の回収が難しくなる


資金繰りが苦しい企業の場合、自社以外にも多くの債権者がいます。放置して様子を見ている間に、銀行や他の取引先、あるいは税務署などが、相手の預金や不動産を次々と差し押さえてしまいます。相手の資産が底をついてから慌てて動いても、回収できる原資はゼロとなるため、早めの対応が求められます。


社内モラルや企業評価の低下


「回収しなくても特に咎められない」という前例を作ると、営業担当者の与信管理意識は著しく低下します。「売れは評価される、回収は二の次」というルーズな体質が定着すれば、悪質な不良債権が発生するでしょう。回収放置を許容することは、会社全体のガバナンスの欠如につながり、銀行や監査法人からの企業評価を下げる要因にもなりかねません。


売掛金の回収で買主が応じてくれる場合

買主が応じてくれる場合

ここからは、先ほどの『売掛金が回収できない場合の対処法』とは異なり、買主が支払いに応じる意思を示している場合における対処法を紹介します。


  • 未払金残高確認書を作成する
  • 決算書の提出を要求する
  • 債権譲渡担保契約をする

それぞれのケースについて詳しく紹介します。


未払金残高確認書を作成する


未払金残高確認書は、売主がたたき台を作成し、買主が内容を確認して返済計画を記載し、署名・捺印する書類です。発行日、売主・買主の名称と住所、未払金額、支払期日、請求内容の詳細を内容に含めます。


この書類は、未払いの事実と買主の支払い意思を示し、法的にも有効です。仮差押えや訴訟でも証拠として活用でき、未回収リスクを減らせます。


未払金残高確認書の作成時には誤りがないかを確認し、買主に送付しましょう。買主が返済計画を記載し、署名・捺印して返送すれば、双方の認識が一致します。控えを保管し、必要に応じて専門家の助言を受けると安心です。未回収リスクを抑えるには、この書類の早期作成と確実な記録が重要です。


決算書の提出を要求する


決算書を提出してもらうことで、相手企業の財務状況や支払い能力を確認できます。資産や負債、キャッシュフローや財務比率を把握することで、未回収リスクが予測しやすくなります。また相手企業の資金繰りが厳しい場合等に予想される分割払いや支払猶予相談などを受けた際の参考にもなります。


定期的に決算書を提出してもらえば、取引先の業績悪化や資金状況の変化を早期に察知でき、迅速な対応が可能です。財務状態が悪化している場合、取引条件を見直し、担保の追加や支払期限の短縮などでリスクを回避できます。


決算書を提出してもらい分析することは、相手の信頼性を見極め、長期的な取引の安全性を確保する重要な手段です。また、一般的に決算書の提出を拒む企業は多く、業績が悪い場合には特にその傾向が強いです。したがって、決算書の提出を要求する際は、契約書に定期提出を明記し、常に最新情報を把握できるようにしましょう。


債権譲渡担保契約をする


債権譲渡担保契約は、売主が自社の売掛金を金融機関や買主の取引先に譲渡し、担保とする契約です。売主は買主が支払い不能になった場合でも、直接譲渡先から売掛金を回収できるため、未回収リスクを減らせます。


しかし、譲渡先が突然の支払い要求に戸惑い、関係が悪化する可能性もあります。さらに、買主が破産した場合、譲渡担保権が制限されたり、他の債権者より優先順位が低くなったりするリスクも否めません。そのため、資金繰りが厳しい取引先との契約では特に注意が必要です。


債権譲渡担保契約を締結する際には、リスクを抑えるために連帯保証を設定することが効果的です。また、事前に契約内容を確認し、記載漏れや不備がないかをチェックすることが重要です。そして、契約締結後も、定期的に見直しを行い、最新の取引状況を反映させるようにしましょう。併せて、弁護士などの専門家と相談し、契約条項や必要書類を整えることをお勧めします。


債権譲渡担保契約では、慎重な準備と適切な契約締結が、未回収リスクの回避につながります。


売掛金の回収で買主が応じてくれない場合

買主が応じてくれない場合

買主が応じてくれない場合には、以下の対処を検討しましょう。


  • 内容証明郵便を使う
  • 法的手段をとる

それぞれの対処法について詳しく紹介します。


内容証明郵便を使う


内容証明郵便で正式な請求を行うことが、法的措置の第一歩です。法的措置をとるには「売掛金を請求した証拠」が必要です。電話やメールだけでは証拠として不十分になりやすいため、内容証明郵便を利用しましょう。


内容証明郵便は、郵便局が発送日や内容を証明してくれる郵便で、これにより請求の事実を法的に証明できます。発行には、表題、通知内容(売掛金の請求であること)、日付などを記載し、3部作成します。1部は買主用、1部は自社保管用、1部は郵便局が保管します。正しい書式で作成し、発送の控えを確実に保管しておきましょう。


これにより、買主に「請求されていない」と主張されるリスクを防ぎ、その後の法的手続きもスムーズに進められます。


法的手段をとる


自力での回収が難しい場合は、法的手段を検討する必要があります。一般的な選択肢として、仮差押え・訴訟・支払督促・強制執行があります。


仮差押えは、買主の預金や不動産、売掛金を裁判前に凍結し、資産隠しを防ぐための手続きです。その後の法的措置として、訴訟または支払督促を選択することができます。訴訟は裁判所の判決を得て強制執行が可能になりますが、時間と費用がかかる点に注意が必要です。


一方、支払督促は裁判所から買主へ支払いを求める文書を送付する手続きで、異議がなければ迅速に回収できます。しかし、異議が出た場合は訴訟に進む可能性があり、状況によっては最初から訴訟を選ぶ方が適切な場合もあります。


訴訟や支払督促で確定判決を得た後は、強制執行による回収が可能です。買主の財産を裁判所の命令で差し押さえ、強制的に売掛金を回収することができます。


どの手段を選択するかは、買主の財務状況や連帯保証人の有無を考慮する必要があります。法的手続きには時間やコストがかかるため、弁護士に相談しながら適切な方法を選び、早めに対応することが重要です。


売掛金の未回収を防ぐための方法

未回収リスクを防ぐために

売掛金の未回収を防ぐには、以下のポイントに注意しましょう。


ポイント 具体例
売上債権回転期間の確認 平均回収期間を業界標準と比較し、大幅に長い場合には、取引条件の変更など予防的処置を検討する
当座比率の確認 当座比率を業界標準と比較し、極端に低い場合は、保証金や担保設定等リスク分散策を検討する
与信管理の強化 取引先の信用情報を定期的に確認し、リスクが高い場合は条件変更や担保設定を検討する
取引前の信用調査 新規取引先の信用を事前に確認し、リスクを減らす
請求書の早期発行と期限の明確化 請求書は早めに発行し、支払期限を明確に伝える
定期的な督促 支払いが遅れた場合はすぐに督促し、記録も残す

これらのポイントを実践すれば、売掛金の未回収リスクを最小限に抑えられます。


AGSの与信管理システム「ニューロウォッチャー」では、継続的な信用情報の管理が可能です。取引先の信用情報を定期的に確認し、倒産による貸倒リスクを未然に防ぎ、取引基盤を安定化させる効果が期待できます。信頼できる与信管理を通じて、継続的に安全な経営環境を築きましょう。


(補足)会計・税務上の留意点

(補足)会計・税務上の留意点

売掛金の未回収が長期化する場合には、単なる回収問題にとどまらず、会計処理や税務対応についても慎重な検討が必要になります。適切な処理を行わなければ、決算書の信頼性に影響するだけでなく、税務調査で指摘を受ける可能性もあるため注意が必要です。


  • 「貸倒引当金」の設定を検討する
    まず検討すべきなのが「貸倒引当金」の設定です。回収不能となる可能性が高い債権については、将来の損失に備えて引当金を計上します。これにより、実態に即した財務状況を示すことができ、決算の透明性が高まります。引当金の計上には一定の見積根拠が求められるため、債務者の財務状況や回収可能性を客観的に検討することが重要です。

  • 「貸倒損失」として損金算入できる可能性を確認する
    また、法的整理や事実上の回収不能が明らかになった場合には、「貸倒損失」として損金算入できる可能性があります。ただし、税務上は要件が厳格に定められており、単に支払いが遅れているという理由だけでは認められません。破産手続開始決定や内容証明郵便による督促履歴など、回収努力を尽くしたことを示す証憑の保存が不可欠です。

  • 売掛金の評価誤りによる影響に注意する
    さらに、売掛金の評価を誤ると、利益の過大計上や資産の過大表示につながるおそれがあります。未回収債権が増加している場合は、売上計上基準や与信管理体制そのものを見直す必要があるかもしれません。経理部門だけで判断せず、営業部門とも連携しながら実態を把握することが重要です。

  • 専門家相談と証憑の整理・保存を徹底する
    会計・税務処理は専門的な判断を伴う分野です。重要な処理を行う際は、税理士や公認会計士、必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、法令に沿った適切な対応を行いましょう。証憑の整理・保存を徹底し、客観的な根拠をもって処理することが、企業の信頼性を守ることにつながります。

まとめ|未回収防止には早期対策と継続的な管理が大事

与信コラム11まとめ

売掛金の未回収は、企業の資金繰りや経営に深刻な打撃を与えます。回収リスクを減らすには、早期の対策と継続的な管理が不可欠です。


取引前の信用調査や契約時の明確な条件設定、支払い遅延時の迅速な対応が求められます。さらに、定期的な与信管理や請求書の早期発行、督促の徹底を行うことで、リスクを最小限に抑えられます。


万が一回収が難しくなった場合は、法的手段を視野に入れた迅速な対応が必要となります。


そのような状況にならないためにも、AGS株式会社の「ニューロウォッチャー」の活用をお勧めします。


「ニューロウォッチャー」を活用すれば、継続的に信用情報を管理でき、未回収リスクを回避し、安定した資金繰りの確保に役立ちます。


継続的な与信管理と効率的な管理ツールを駆使して、安心できる経営基盤を築いていきましょう。


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