与信コラム

海外取引で失敗しないために! 信用調査の必要性と調査方法を解説

与信コラム13



はじめに

グローバル化が進む現代のビジネス環境においては、海外企業との取引の重要性は高まっています。ただ、異なる文化や法制度の中にある海外企業とのビジネスには様々なリスクも伴います。


その中でも特に注意すべきもののひとつが、取引相手の信用度です。海外企業の信用調査は、ビジネスの成功を左右する重要な要素であるといえます。


たとえ自社がどれほど素晴らしい製品やサービスを提供していても、取引先の信用度が低ければリスクが発生する危険性があります。支払い遅延や倒産などの問題が起こると、計画していた売り上げや資金繰りが一気に崩れてしまいます。


本コラムでは、そんなリスクを未然に防ぐために、海外企業への信用調査の必要性とその具体的な調査方法について詳しく解説します。この解説を通じて、安心して海外取引を進めるための知識とツールの理解を深めていきましょう。


海外企業との取引における信用調査の重要性

信用調査の重要性

海外企業との取引には、大きな成長のチャンスがある一方で、相手企業の財務状況や経営体制を正確に把握しにくいというリスクがあります。言語の壁や異なる商習慣、法的ルールの違いなど、国内企業との取引では想定しづらい課題も多いです。


そのため、充分な信用調査を行わずに契約を進めてしまうと、倒産や支払い遅延、不正取引などの深刻なトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。


こうしたリスクを回避するには、相手企業が本当に信頼できるパートナーなのかを早めに確認し、客観的な情報を活用して評価することが重要です。


適切に信用調査を行えば、財務指標や支払い履歴、現地での評判など多方面のデータを得られ、取引条件や契約金額をスムーズに設定するための基盤が整います。


海外企業の信用調査が必要な場面

信用調査が必要な場面

海外企業に対する信用調査は、基本的に新規取引を開始する際に求められることが多いです。現地法人や海外代理店を通じて紹介された企業であっても、実態が分かりにくいまま契約を結ぶのは危険です。


契約金額が大きいプロジェクトや長期的なパートナーシップを検討している場合は、倒産リスクや支払い遅延の可能性をあらかじめ調べておかないと、大きな損失を被る恐れがあります。


既存の取引先から急に支払い条件変更の要求があるケースや、経営者の交代によって社内体制が不明瞭になるケースにも要注意です。経営方針が変わった結果、資金繰りが悪化している可能性もあるため、念のために追加の信用調査を行い、リスクを早期に察知することをおすすめします。


さらに、現地の法制度や商習慣を十分に把握していない場合には、相手企業との認識のズレから契約トラブルが起きやすくなります。関係が長期化すると金銭面だけでなく、ブランドイメージや社内リソースなどにまでも悪影響を及ぼすため、取引開始前の信用調査で企業の健全性をしっかり見極めることが必要です。


海外企業の信用調査を行う3つの方法

海外企業調査の3つの方法

海外企業の信用調査にはさまざまなアプローチがありますが、ここでは代表的な3つの方法を紹介します。それぞれ費用や取得できる情報の深度、手間や時間が異なるため、自社の状況や求める精度に合わせて選択するのがポイントです。


  • 公的情報や無料データを活用する
  • 信用調査会社のサービスを利用する
  • 与信管理システムを導入する

それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。


1. 公的情報や無料データを活用する

まず考えられるのは、企業登録情報や政府機関が提供するデータベースを活用する方法です。海外商業登記所や法人登録サイトなどを検索すれば、会社の設立年や所在地、代表者情報など、基本的な情報を得ることができます。


コストが比較的低く、すぐに始められるという利点がありますが、更新頻度が低かったり、詳細な財務データが掲載されなかったりと、情報量や情報の鮮度に限度があるのが難点です。


こうした公的情報だけで相手企業の経営実態を完全に把握するのは難しいため、必要に応じて他の調査方法も組み合わせるとよいでしょう。


2. 信用調査会社のサービスを利用する

Dun & Bradstreet、Coface、CRIF、Creditsafeなど、海外調査に強みを持つ信用調査会社からレポートを取得するのは、より詳細な情報を得たい企業にとって有力な手段です。


財務データや経営陣のバックグラウンド、過去の支払い実績、推奨与信限度額、さらには評判や評点のような定性情報まで網羅的に把握できるケースが多いことから、確度の高いリスク評価が期待できます。ただし、レポート1件あたりの費用や納期については注意が必要です。


取引先について、より詳細な分析を求めるケースには特に向いている方法だといえます。


3. 海外企業調査サービスのある与信管理システムを導入する

長期的に海外企業との取引を増やしていく方針であれば、与信管理システムを導入するのも有効です。外部データベースとリアルタイムで連携し、スコアリングやリスクアラートを自動生成してくれるものもあり、1社ごとに手作業で調査するよりもはるかに効率的にリスク管理を行えます。


システム上で与信枠や契約条件を一元管理できるものがあれば、企業数が多い場合でも担当者の負担を抑えながら最新情報のモニタリングが可能です。ただし、導入コストがかかること、運用方法をしっかり定めないと形骸化してしまう恐れがあることには注意が必要です。


AGSの与信管理サービス「ニューロウォッチャー」では、中国・韓国・台湾・香港などのアジア各国をはじめ、世界各国の企業について、CRIF Japan株式会社(SkyMinder)による海外企業調査レポートの発注依頼が可能です。


ニューロウォッチャーをご契約いただければ、追加費用なしで本サービスをご利用いただけます。詳細については、以下のページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。




海外企業の信用調査を自分で実施することは可能?

調査を外部に委託せず、自社で完結させることを検討するケースもあるかもしれませんが、その場合は言語の壁や各国の法制度への知識不足が大きなハードルになります。現地の商業登記情報を直接調べるにしても、現地語で記載された書類を正確に読み解かなければならず、誤訳や解釈ミスのリスクが伴います。


また、現地の評判や関係者の口コミを集めるにはコネクションや時間が必要で、どれだけ労力を投入しても網羅的な情報に辿り着けない可能性があります。リスクを十分に軽減したい場合は、信用調査会社やシステムの導入を検討したほうが、結果的にコストパフォーマンスが良いといえるでしょう。


海外企業の信用調査を実施するときのポイントと注意点

信用調査のポイント

海外企業の信用調査を行う上で注意すべきなのは、対応国や調査実績、料金体系、納期などを総合的に比較検討することです。特に現地語に対応できるかどうかは、調査レポートの精度を大きく左右します。


調査会社が現地スタッフを抱えているか、もしくは海外調査に特化したパートナー企業と提携しているかなど、細かい点を確認しておかないと、最終的に得られる情報が不十分になってしまう可能性があります。


また、費用面ばかりを重視してしまうと、調査範囲が限定的になったり、レポートの納期が長引いたりする可能性があります。海外企業は国内以上に経営状況の変化が激しいこともあるので、情報の鮮度や調査精度を確保できるサービスを選ぶことが大切です。


信用調査サービスの利用契約前には、必ずレポートのサンプルや試用版を見せてもらい、その企業が提供する情報レベルが自社の求める水準に合致しているかを慎重に見極めるとよいでしょう。



国内企業と海外企業の信用調査を実施する場合の違い

国内企業の信用調査では、言語や国内法制が共通しているため、登記情報や決算公告の入手が比較的容易です。対して、海外企業を相手にする場合は、時差や言語、文化や法制度など、国内にはない障壁が多数存在します。


例えば、現地の商業登記情報が整備されていない国や、オンラインでアクセスできる情報が極端に少ない国もあり、同じ方法を適用しようとしてもうまくいかないケースが多々あります。また、海外企業の場合はビジネス上の慣習や信用観念が異なることもあり、こちらが想定する「普通のやり取り」が通用しない場合が頻繁にあります。


特に、国内では当たり前の『期日払い』が海外ではそうでないことを理解することが重要です。さらに、カントリーリスクの考慮も欠かせません。カントリーリスクには、政治的不安定、経済危機、為替変動、法制度の変化などが含まれ、これらがビジネス取引に与える影響は無視できません。


加えて、取引先企業のコンプライアンスチェックを行うことも必要です。コンプライアンス違反が発生すると、法的問題や企業の信用の多大な損失につながる可能性があります。法人名や代表者のチェックを行うことで、取引先企業の法令遵守状況や経営体制の健全性を確認することができます。


国内取引では問題にならなかった点が、海外取引では大きなトラブルの引き金になることも珍しくありません。そのため、このような背景を考慮し、細心の注意を払いながら調査を進め、より入念なリスク管理が求められるのです。


国内企業の信用調査については、以下のコラム記事を参考にしてみてください。



まとめ|海外企業の信用調査はシステム活用がおすすめ

与信コラム13_まとめ

ここまで解説してきたとおり、海外企業の信用調査では、言語や文化、法律の違いも踏まえながら複数の情報源を使い分けて、最新のリスク情報を取得し続けることが重要です。


たとえ一度詳細なレポートを入手できたとしても、その後の経営環境の変化や経営者の交代などによって、企業の信用度は短期間で変動する可能性があるため、継続的なフォローが不可欠です。特に、海外企業との取引件数が増えるほど、担当者が手作業で調査を行う負担は大きくなり、チェックの漏れも生じやすくなります。


与信管理システムを導入すれば、こうしたリスク要因をリアルタイムで追跡し、倒産リスクや支払いトラブルの兆候を早い段階で察知できます。システムによって分析やアラート発出のプロセスを半自動化すれば、人的ミスを減らしながら質の高いリスク管理を継続することもできます。


こうした取り組みによって自社の資金繰りを安定させ、海外ビジネスを円滑に拡大するための基盤を強化していきましょう。


AGSの海外企業調査サービスを詳しく知りたい方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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