スコアリングモデルの継続的改善
- 企業情報・格付情報照会サービスでは、経済状況によって変化する企業倒産の動向を反映させるため、格付判定の心臓部である信用スコアリングモデルの見直しを毎年行っております。
- 2021年10月15日(金)を以って、以下の通り、スコアリングモデルを新しいモデル(2021年モデル)に移行します。
1.新モデルへの移行スケジュール
- システムメンテナンスによるサービス提供の休止
- 新モデルによるサービスの再開
2021年10月14日(木)19:00から 翌15日(金)9:00まで
2021年10月15日(金) 9:00から
2.現行モデルの評価(下表参照)
- 東京商工リサーチ社(TSR)の全国企業倒産状況(負債額1,000万円以上)によると2020年の倒産件数はコロナ禍の各種支援策に支えられ約7,773件と30年ぶ りに年間で8,000件を下回りました。
また、2021年上半期(1-6月)の全国企業倒産は、件数が3,044件(前年同期比23.9%減)、負債総額が6,116億5,900万円(同6.9%減)となっています。件数 は、コロナ禍の各種支援もあり、上半期では2年ぶりに前年同期を下回っています。1972年以降の50年間では、1990年同期(2,948件)に次ぐ、2番目の低水準 となっています。 - ニューロウォッチャーでの格付可能な企業の直近1年間の倒産数1,077件と前年同期の1,883件と大幅に減少しており、倒産率においても、倒産件数の減少及び、格付可能企業数の増加の影響により低下傾向が続いております。
- ニューロウォッチャーでの格付可能な企業の過去10年間及び直近8か月間の倒産率は下記の図のように年々減少傾向となっております。
直近12ヶ月(2020/9~2021/8)
格付 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
倒産率 | 0.00% | 0.00% | 0.02% | 0.05% | 0.06% | 0.09% | 0.16% | 0.27% | 0.63% | 0.10% |
倒産件数 | 0 | 3 | 23 | 86 | 126 | 165 | 240 | 218 | 216 | 1,077 |
平均企業数 | 24,205 | 71,381 | 117,466 | 176,176 | 208,154 | 175,479 | 146,366 | 79,818 | 34,196 | 1,033,242 |
注)倒産率実績を算出したデータ(企業数、倒産件数)の詳細については、「過去の倒産実績」をご参照下さい。
注)倒産率の対象となる企業は企業情報・格付情報照会サービスで格付可能業種、期間のみであります。
3.新型コロナウイルス関連倒産状況
TSRの情報によると9月21日現在、「新型コロナ」関連の経営破たんが、全国で累計1,994件(倒産1,888件、弁護士一任・準備中106件)となりました。月別では、2020年10月以降100件以上で推移しており、倒産全体に占める割合は依然高水準を持続しております。
コロナ禍の無利子無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)や各種支援策に支えられ倒産件数は抑えられています。しかし業績不振が長期化し、過剰債務の問題も浮上してきております。今後はコロナ関連支援で中小企業向け貸出が過去最高となった金融機関のアフターコロナに向けた企業の事業再生にどう取り組むのか注目されております。
業種別にみると、減収・減益を余儀なくされる状況が続く中、これまではアパレル、飲食、宿泊業について注目してきましたが、飲食店等の営業自粛に伴いこれらを取り巻く取引先の事業環境は厳しく、倒産先も増えてきております。特に「建設・工事業」はこの影響を大きく受けてきたほか、近時はウッドショックによる資材の高騰・調達の影響が出はじめています。
4.新モデル(2021年モデル)の特徴および改善点
上記の評価結果を踏まえ、以下の通りスコアリングモデルの変更を行いました。
- コロナ禍において中小企業支援策により倒産の抑制には繋がったが、今後も売上が伸びない状況が続くと予想される中、当初の借入の返済が始まり企業はより厳しい資金繰りが続きます。飲食店、小売店、旅館等毎日の収入減の中、手元資金が乏しい企業はより厳しい状況となります。そのため昨年に引き続き企業の体力(資本、流動性、支払能力)を重視し、今年度のモデルを構築しました。
- 今後1年間の倒産件数は全体には横ばいの状態が続きますが、コロナを要因とした倒産は増える傾向にあります。件数的には昨年と比べてはやや増加し、8,000件程度(法人倒産のみ、個人事業主の倒産は除く)で推移するものと予測して格付判定の基準を設定しました。
- 新モデルでは現行モデルと比較して59%の企業に変化があります(43%が1段階の変化)。その比較については下記のとおりです。
格付が改善する企業・・・27.0%(うち1ランク改善18.0%)
格付に変化ない企業・・・41.1%
格付が悪化する企業・・・31.9%(うち1ランク悪化24.5%)
業種(6業種分類)別現行モデルとの判定結果比較表
業種 | 建設 | 製造 | 卸 | 小売 | サービス | その他 | 全体 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
格付が2段階以上改善 | 6.2% | 9.1% | 7.6% | 14.5% | 10.6% | 9.7% | 9.0% |
格付が1段階改善 | 14.9% | 20.0% | 17.1% | 17.6% | 18.6% | 20.3% | 18.0% |
格付に変化なし | 44.8% | 44.1% | 42.7% | 32.9% | 38.3% | 39.4% | 41.1% |
格付が1段階悪化 | 26.1% | 22.0% | 26.3% | 25.0% | 23.5% | 23.8% | 24.5% |
格付が2段階以上悪化 | 7.9% | 4.7% | 6.3% | 10.0% | 9.1% | 6.8% | 7.4% |
5.新旧スコアリングモデルの詳細比較
2021/9 評価用データによる比較
格付 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
登録企業数(①) (2021/9) |
2020年モデル | Aモデル | 9,267 | 25,662 | 41,496 | 57,614 | 71,512 | 53,748 | 36,099 | 17,504 | 13,328 | 326,230 |
Bモデル | 15,306 | 44,748 | 74,742 | 118,362 | 137,623 | 124,240 | 115,380 | 66,571 | 22,968 | 719,940 | ||
A+B(①) | 24,573 | 70,410 | 116,238 | 175,976 | 209,135 | 177,988 | 151,479 | 84,075 | 36,296 | 1,046,170 | ||
2021年モデル | Aモデル | 7,270 | 24,970 | 41,502 | 56,745 | 71,163 | 54,798 | 37,006 | 18,573 | 14,203 | 326,230 | |
Bモデル | 13,863 | 44,634 | 74,948 | 112,538 | 134,127 | 144,869 | 115,632 | 56,631 | 22,698 | 719,940 | ||
A+B(①) | 21,133 | 69,604 | 116,450 | 169,283 | 205,290 | 199,667 | 152,638 | 75,204 | 36,901 | 1,046,170 | ||
倒産件数(②)(2020/9~2021/8) | 2020年モデル(②) | 0 | 3 | 23 | 86 | 126 | 165 | 240 | 218 | 216 | 1,077 | |
2021年モデル(②) | 0 | 3 | 22 | 60 | 117 | 187 | 236 | 220 | 232 | 1,077 | ||
倒産率(②÷①) | 2020年モデル倒産率 | 0.00% | 0.00% | 0.02% | 0.05% | 0.06% | 0.09% | 0.16% | 0.26% | 0.60% | 0.10% | |
2021年モデル倒産率 | 0.00% | 0.00% | 0.02% | 0.04% | 0.06% | 0.09% | 0.15% | 0.29% | 0.63% | 0.10% |
Aモデル:財務情報・企業情報に基づいて判定
Bモデル:企業情報に基づいて判定