与信コラム


人権デューデリジェンス(人権DD)とは?
海外取引における重要性解説と事例紹介

人権デューデリジェンス(人権DD)とは?海外取引における重要性解説と事例紹介く解説!


はじめに

グローバル化が進む現代のビジネスでは、企業は利益だけでなく、「人権デューデリジェンス(人権DD)」という社会的責任が求められています。


本コラムでは、「人権デューデリジェンス(人権DD)」の基礎から国内外のガイドライン、企業事例などについて紹介します。この記事を読めば、国際的な信頼性を高める実務ヒントが得られます。


人権デューデリジェンス(人権DD)とは

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人権デューデリジェンス(人権DD)とは、企業活動や取引に伴う「人権リスク」を特定し、予防・是正するための継続的な取り組みを指します。


デューデリジェンスは、英語の「due(当然の)」と「diligence(努力)」からなる言葉です。自社の従業員(正社員、アルバイト、パートなど) だけでなく、取引先を含むサプライチェーン全体において、適切な対応をとる必要があります。


日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、人権尊重の方針を策定している企業は約4割になり、大企業に限れば約6割が既に整備済みです。 制度の導入により、国際的な信用力の向上や法的リスクの低減が期待されています。


参照:日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査|日本貿易振興機構(JETRO)


人権リスクとは


人権リスクとは、企業活動や取引を通じて、人々の基本的な権利や自由が侵害されるおそれを指します。


  • 賃金の不足・未払、生活賃金の未確保
  • 違法・過剰な長時間労働
  • 労働安全衛生の不備
  • ハラスメント(パワハラ・セクハラ等)
  • 強制労働・人身取引
  • 外国人労働者の権利侵害
  • 児童労働
  • プライバシー侵害
  • 環境・気候変動に関わる人権問題

特に国際的なサプライチェーンでは、現地の実態が把握しづらく、リスクが顕在化しにくい点が課題です。


人権デューデリジェンス(人権DD)の目的


人権デューデリジェンス(人権DD)は、2011年国連で、「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されたことを契機に、 世界中で企業の責任ある行動が求められるようになりました。具体的には、主に3つのポイントを考える必要があります。

(1)人権方針の策定 人権尊重の姿勢を明文化し、社内外へ周知する。
例:人権方針の策定・公開、責任部署や担当者を明確化
(2)人権DDの継続的実施 自社および取引先の人権リスクを調査・評価し、改善を行う。
例:現工場や現場での人権影響調査・評価の実施、人権に関する年次報告の発行
(3)救済メカニズムの構築 被害や苦情を受け付け、適切な対応や解決を図る仕組みを備える。
例:社員専用の匿名通報窓口を設置、取引先や消費者からの外部窓口の運営

これらを整えることで、人権侵害の未然防止、国際的な信頼獲得、そして持続可能な成長を同時に実現する基盤となります。


出典:国際連合広報センター/ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために(A/HRC/17/31)


人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン

人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン

人権デューデリジェンスを効果的に進めるためには、国や関連機関が策定したガイドラインを理解し、自社の規模や業種に合わせた活用が重要です。 国内では、次のような代表的な指針が用意されています。


  • 日本政府が定めた人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン
  • 中小企業のための人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン

これらのガイドラインは、国際的な人権基準を踏まえつつ、日本企業が現場で実行可能な手順や事例を提供しています。 次項から、それぞれの内容と特徴を具体的にみていきましょう。


日本政府が定めた人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン


日本政府は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。 ガイドラインでは、企業が人権デューデリジェンスを実践するための3つのステップを示しています。

ステップ1
人権方針の策定
企業のトップを含む経営陣が、人権尊重へのコミットメント(約束)を明確にし、 人権方針を社内外に公開する。
ステップ2
人権DDの実施
自社や取引先、委託先などサプライチェーン全体を対象に、 強制労働・児童労働・差別などの人権侵害リスクを特定・評価します。 そのうえで優先度をつけて改善策を講じ、 取り組みの実効性を定期的に検証・公表する。
ステップ3
救済
自社が人権侵害を引き起こした、または関与した場合には、 被害者への救済を自ら行うか、または適切な形で協力する。

国際的な経営を実現するためには、上記のガイドラインの活用は重要です。


参照:責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン|経済産業省


中小企業のための人権デューデリジェンス(人権DD)のガイドライン


一般財団法人国際経済連携推進センターでも、大企業と取引する中小企業が人権デューデリジェンスを効果的に導入できるよう、 「中小企業のための人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン」を策定しています。


ガイドラインでは、(1)経営者による人権尊重方針の策定と社内外への周知、(2)事業規模や取引内容に応じた人権リスクの把握と優先順位付け、 (3)苦情や相談対応の仕組み整備、の3つの柱を中心に示しています。さらに、チェックリストや事例集も付属し、初めての企業でも段階的に導入可能です。


参照:中小企業のための人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン|一般財団法人国際経済連携推進センター


人権デューデリジェンス(人権DD)の企業事例

人権デューデリジェンス(人権DD)の企業事例

国内でも多くの企業が、サプライチェーン全体を視野に入れた人権リスクの特定や改善に力を注いでいます。以下では、2社の事例を紹介します。


  • 株式会社ファーストリテイリング
  • 株式会社東芝

以下では、具体的な取り組み内容をみていきましょう。


株式会社ファーストリテイリング


ユニクロやGUなどを展開するファーストリテイリングは、国際的なアパレル企業として生産拠点が広範に及ぶため、2018年7月から人権委員会を設置し、 人権デューデリジェンスに取り組んでいます。


委員会ではサプライヤー審査や新規取引国のリスク評価を担い、各地の労働環境監査や改善支援を実施。 従業員向けにはeラーニングや研修で人権意識を高め、取引前のデューデリジェンスとリスク評価を徹底しています。


また同社は児童労働や強制労働の対策として、労働安全衛生と適正賃金を全サプライヤーに求め、監査結果を公開しています。


参照:人権の尊重|ファーストリテイリンググループ


株式会社東芝


東芝グループは、電機産業のサプライチェーンが複雑であることを踏まえ、人権デューデリジェンスを経営の柱としています。 経営理念に「人間尊重」を掲げ、取引先も含めた関係者に配慮した事業運営を重視しています。


同社は、サプライヤー(取引先企業)の労働環境や安全性を確認するため、労働時間・賃金・安全衛生・強制労働禁止といった項目を調査。 問題が見つかれば改善計画を求め、専門家による現場支援も行っています。


また、全社員向けの研修やeラーニングで人権意識を浸透させ、2021年度には受講率99%を達成。 サプライチェーン全体の透明性と信頼性向上につなげています。


参照:人権の尊重|東芝グループ


海外取引における人権デューデリジェンス(人権DD)の重要性

海外取引における人権デューデリジェンス(人権DD)の重要性

海外取引を行う企業にとって、人権デューデリジェンスへの対応は避けて通れない課題です。

特に欧州では、EUの「企業持続可能性デューデリジェンス指令案」や、ドイツの「サプライチェーン法」、 フランスの「義務的デューデリジェンス法」など、企業に対して人権リスクの特定・是正を義務づける法制度が次々と導入されています。


これらの制度では、違反した場合に高額な制裁金や取引制限が科される可能性があり、欧州企業と取引する日本企業にとっても無関係ではありません。


また、東南アジアをはじめとする新興国でも、労働環境や人権問題への国際的な監視が強まっています。 特に製造業や輸出産業では、国際的な取引先からの監査や改善要求が増加しており、サプライチェーン全体の透明性確保が競争力維持の条件となっています。


こうした国際的な潮流を踏まえ、日本企業が海外で事業を展開する際には、自社および取引先を含めた人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、グローバル基準に適合させることが不可欠です。


まとめ

まとめ

海外取引を行う際には、人権デューデリジェンスへの対応が不可欠です。取引先の選定では、人権尊重の方針を掲げ、 組織的に実行しているかをガバナンスの観点から見極めることが欠かせません。


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