与信管理に企業格付を活用するには?企業格付の調べ方も解説

はじめに
与信管理において、企業格付は欠かせない要素です。しかし、企業格付の定義や具体的な活用方法について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、企業格付の定義や重要性、具体的な調査方法などを交えて解説します。また、国内外の格付手法や社内格付の活用方法にも触れ、効率的な与信管理の構築に役立つ情報を紹介します。
企業格付を活用したリスク管理を深く理解するためにも、ぜひ最後までお読みください。
企業格付の定義と重要性

企業格付をする際に、以下のポイントを押さえておく必要があります。
- 企業格付の定義
- 企業格付の重要性
ポイントを理解し、企業格付について理解を深めていきましょう。
1. 企業格付の定義
企業格付とは、主に第三者機関が客観的な評価基準に基づいて算出します。
評価基準は多岐にわたり、企業の総合的な実力を示すものや、債務履行能力や倒産リスクに重きを置いたものなど多様です。また、企業格付の評価は、企業の財務状況・資産構成・負債比率などを基に行う「定量評価」と、経営方針・市場競争力・業界内のポジションなどを考慮する「定性評価」に分けられます。
AGSを例に挙げると、格付方法は信用力の高い企業を1(最高評価)とし、信用リスクの高い企業を9(最低評価)とする9段階での表現です。信用力を数値化することで、取引条件の調整やリスク分散が効率的に行えます。
企業格付は、取引の安全性を確保するだけでなく、事業運営を円滑に進めるための重要な基盤といえるでしょう。
2. 企業格付の重要性
企業格付は、与信管理の中核を担う重要な役割となる指標です。取引先の財務状況や経営の安定性を正確に把握し、取引先から代金(売掛金)を回収できなくなるというようなリスクを未然に防げます。
信用力を評価するための客観的なデータは、透明性を高め、経営判断の精度向上としても欠かせません。また、格付を活用することで、取引先に対する信頼性が向上し、強固なビジネス関係を築く基盤を整えられます。この透明性の確保は、取引相手からの信頼獲得や、自社のブランドイメージ向上にも寄与します。
さらに、リスクの高い取引先を早期に特定でき、適切な対策を講じることが可能です。これにより、経営資源を効率的に活用し、予期せぬ損失を防止できます。
企業格付は、取引の安全性を確保するとともに、安定した経営基盤を築くための欠かせない手段といえるでしょう。
企業格付の調べ方

企業格付をするには、以下の方法があります。
- 信用調査会社の格付方法
- ニューロウォッチャーの格付方法
以下では、信用調査会社が採用する格付手法や、AGS独自のスコアリング信用格付について詳しく解説します。
1. 信用調査会社の格付方法
国内の信用調査会社は、企業の信用力を総合的に評価するために「定量評価」と「定性評価」を組み合わせた手法を採用しています。例えば、大手調査会社では企業を以下の4つの視点から分析しています。
- 経営者能力(20点):経営姿勢や事業経験を評価
- 成長性(25点):売上高や利益の伸長性、市場性を基にした評価
- 安定性(45点):業歴や自己資本、金融取引状況を重視
- 公開性・総合世評(10点):資料公開状況や外部からの評価を考慮
これらを合計し、100点満点で評点を算出します。この点数は、「80~100点」で警戒不要、「65~79点」で無難、「50~64点」で多少注意が必要といった形で信用度を示します。
また、新規取引の際には「安定性」を重視し、成長可能性を確認する場合には「成長性」を比較するなど、用途に応じた使い分けが可能です。既存の取引先に対しては、過去のデータと比較しながら信用状況の推移を確認することが有効です。
2. AGSのスコアリング信用格付方法
AGS株式会社は、金融機関の融資審査ノウハウを活用し、企業の信用力を9段階で評価する独自のスコアリングモデルを構築し、格付システムを提供しています。この格付では、リスクの低い企業を「1」、リスクの高い企業を「9」として評価します。特に、倒産リスクを数値化している点が特徴です。
AGSのスコアリングモデルは、2つのモデルが存在します。
- Aモデル(財務情報モデル):財務データが登録されている企業を対象に、企業情報の主要項目に加え、貸借対照表や損益計算書などを基に評価します。
- Bモデル(企業情報モデル):財務情報がない場合でも、企業情報の主要項目を基に評価します。
どちらのモデルを使用するかは自動的に選択され、Aモデルでは「A1~A9」、Bモデルでは「B1~B9」といった形で格付結果が表示されます。
AGSの格付には東京商工リサーチ(TSR)の企業情報や財務情報を活用しています。TSRが保有する膨大なデータベースが格付の精度向上に寄与しています。
こうしたシステムにより、AGSの格付は、取引先や投資先の信用リスクを正確に把握し、信頼性の高いリスク管理を実現します。
海外企業の企業格付

本項では、海外企業の格付について詳しく解説します。
- 海外企業の格付が必要となっている背景
- 海外企業の格付を外部委託する際の注意点
これらのポイントを押さえ、海外企業の格付を検討してみてください。
1. 海外企業の格付が必要となっている背景
国際取引が拡大し、海外企業とのビジネス機会が増えています。しかし、地理的な距離や言語の壁があるため、相手企業の信用力を十分に把握するのは容易ではありません。このような状況下では、企業格付は重要な判断材料となり、取引リスクの軽減に役立ちます。特に、海外市場での競争力や財務健全性を適切に評価することが、取引の成功につながります。
こうしたリスクを軽減するには、現地の政治や経済の動向を正確に把握し、信用調査を徹底することが重要です。企業格付を活用し、安心して取引できる基盤を築くことが成功への第一歩となります。
2. 海外企業の格付を外部委託する際の注意点
海外企業の格付を取得するために調査会社を利用する際、自社に専門の部署や、英語や現地語に精通した人材がいない場合は、日本語対応が可能かを確認することが重要です。例えば、報告書が英語や現地語のみの場合、専門用語や背景情報を正確に理解できず、判断を誤るリスクがあります。また、言語の違いにより意思疎通が円滑に進まないと、重要な情報が伝わらず、取引リスクを過小評価してしまう恐れがあります。
さらに、調査範囲に現地での直接調査が含まれているかも確認が必要です。現地調査は、公開情報では把握できない実態やリスクを明らかにでき、企業の信用力を正確に評価する助けとなります。特に、地域特有の規制変更や政治的影響といった表面化しにくいリスクを理解するためには、現地の実情に基づいた調査が効果的です。
これらの点を考慮しながら、信頼できる調査会社を選定することで、海外取引のリスクを大幅に軽減できます。
社内格付とは

社内格付とは、取引先を評価するために、自社独自のルールに基づいて設定される格付です。この仕組みでは、第三者機関による企業格付や信用調査会社が提供するデータを基にしつつ、自社の業務や取引先との関係性に即した評価を加えます。例えば、財務指標に加えて取引履歴、支払状況、現場の評価など、内部情報を反映することで、より実態に合ったリスク管理が可能となります。
ただし、社内格付には注意すべき点もあります。独自の視点に偏ると、評価の客観性や正確性が不足し、外部環境の変化や市場リスクを見落とす恐れがあります。そのため、外部データや第三者機関の格付を活用しながら、自社基準とのバランスを取ることが重要です。
企業格付を活用した与信管理
企業格付は、取引先のリスクを客観的に評価し、与信管理を効果的に行うための重要な指標です。新規取引の開始時には、信用力を基に与信限度額を設定し、取引条件を調整することで、取引先から代金(売掛金)を回収できなくなるというようなリスクを未然に防げます。
また、財務指標だけでなく、市場動向や業界トレンド、取引履歴などを総合的に評価することで、より正確な与信判断が可能です。さらに、既存取引先の格付を定期的に見直すことで、経営状況の変化を早期に察知し、迅速な対応ができます。
企業格付を積極的に活用し、安定した取引環境と経営基盤を築いていきましょう。
まとめ

企業格付は、与信管理の中心的な役割を担う重要な指標です。信用力を客観的に評価することで、取引先のリスクを的確に把握し、取引先から代金(売掛金)を回収できなくなるというようなリスクを未然に防げます。また、国内外の格付手法やAGS独自の評価を活用すれば、より精度の高い判断が可能です。さらに、社内独自の基準を組み合わせることで、自社の特性に合わせた柔軟なリスク管理が実現します。企業格付の活用を通じて、安定した事業基盤を構築し、持続可能なビジネスを目指しましょう。