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さいたま市様の導入事例
統合運用管理の導入

さいたま市様
▲(左より)さいたま市 都市戦略本部情報政策部 情報システム運用管理担当 諸貫主任、鈴木副参事、小林主査

 さいたま市様では、2011 年より統合運用管理業務をAGS に委託しています。
今回は、統合運用管理の導入を検討した理由や導入により期待されたこと、統合運用管理の効果等について、さいたま市都市戦略本部情報政策部の情報システム運用管理担当、鈴木副参事、小林主査、諸貫主任にお話を伺いました。

マルチベンダー・マルチシステムの状態に新たに統合運用管理システムの導入を検討

情報システム運用管理担当 鈴木副参事

― 「統合運用管理」導入を検討されたのは、いつ頃、どんなきっかけからですか?

 2001 年度の3 市合併以降、ホストコンピュータ(一極集中かつ独自仕様のクローズシステム)を使用しており、ベンダー1 社によるベンダーロックインの状態でした。そのままでは運用保守費の増加が懸念されたため、2005 年度に「情報システム最適化プラン」を策定し、国際標準仕様のシステム、いわゆるオープンシステムによる全体最適化を図りました。そこでは、ハードとソフトの分離調達、システム間を繋ぐ統合基盤の構築、アウトソーシングの推進など様々な取り組みを実施し、2010 年度に政令市初となる完全オープン化を達成しています。
 当初は、コスト優先の最適化、脱ホストコンピュータだけを掲げていました。しかし、オープン化によるマルチベンダー・マルチシステムが進むにつれ、関係するシステム間の処理スケジュール調整や運用、各システムの稼働監視が負担となり、新たに統合運用管理システムを導入しています。
 さらに、障害時の責任分界点の切り分け及び24 時間365 日全システムの運用管理は職員だけでは厳しいと感じ、2011 年度に「OMO(Operation ManagementOffice)」と「統合運用管理事業者」を設置しました。なお、現在OMO は一部の機能を統合運用管理事業者に移管し、廃止されています。

― 「統合運用管理」導入にあたり、AGS にお声がけ頂いた理由を教えてください。

 AGS は合併以前からホストのオペレーション業務などを担当していたので、市の情報システム環境を知っているという点で統合運用管理事業者の企画時に協力いただきました。実際の調達は一般競争入札で実施しています。

― 「統合運用管理」導入により期待されたことは何ですか?

 コスト優先最適化の一環であることを意識し、より良い運用や手順があればベンダーに対し指示の上、改善を行い、情報システムの安定的かつ効率的な運用を行うことを期待しました。
 また、情報システムの運用には業務の継承が不可欠であり、市のシステム運用の継承者になってもらうことも期待しました。市の職員は、システム専門の要員として採用されているわけではなく、また人事異動もあるため、過去の経緯が忘却されてしまいます。しかし、大体のシステムは設計・構築・運用開始までに3 年かかり、少なくとも10 年以上は使います。再構築の際に、当初の経緯や運用部分がきちんと継承されている必要がありました。
情報システム運用管理担当 諸貫主任

― 一般競争入札での選定とのことですが、業者に求めた条件は何でしょうか?

 基本的には、一般的なオペレーション業務に長けていること、統合運用管理システムに精通していることです。一番重要視したのは、マルチベンダーとなるため、障害発生時の仲介役として、中立な立場で状況を判断できることです。

時間外の削減、そして働き方の見直しへ

― 「統合運用管理」を活用したことにより、改善・向上されたことを教えてください。

 統合運用管理導入以前では、職員がプログラム開発やバッチ処理のスケジュール管理などを行っていましたが、導入後はその作業がなくなり、時間外の削減や働き方の見直しにもつながっています。
 運用開始後から当市の担当職員数に大幅な変化はありませんが、直接受ける問い合わせの件数は削減されました。ヘルプデスクを設置し、FAQ システムのメンテナンスを定期的に実施している成果だと思っています。以前は日中に問い合わせ対応をし、定時後に自分の作業をしていましたが、現在は、以前と比べて残業も削減されています。24 時間365 日対応している消防等の部署もあり、困ったときに問い合わせできる場所があるというのは安心感があると思います。
 委託開始後からインシデント管理システムを使って、障害対応等のノウハウの蓄積やベンダーへの依頼などを実施しており、案件の放置や無計画な遅延もなくなりました。システムの安定化も継続されています。
 また、約80 のシステムを統合運用管理して、各システムの運用を標準化・自動化したことで、個別の運用経費がほぼ横ばいとなっている他、手順書がきちんと整備・明文化されたことも大きな成果であると思っています。
情報システム運用管理担当 小林主査

― 「統合運用管理」について良いところと改善して欲しいことを教えてください。

 良いところは、前述の通り、様々な成果があることです。障害発生時の経験が蓄積されており、同様の障害が発生したときには迅速に対応ができています。
 改善して欲しいところは、専門用語が多く、日常的に使用しているため、新任の担当者は意味が分からず苦労をすることがあります。人事異動により担当者は変わっていくため、専門用語については分かりやすく解説いただけると良いと思います。また、運用管理事業者側も人の入れ替わりがあるためか、品質にばらつきが見られます。レベルの統一化を望みます。
 今後、対象となるシステムが増えていくかと思いますので、引き続き標準化・自動化して安定的かつ効率的な運用ができるよう積極的に改善を進めて欲しいと考えています。

― 当社への今後の期待、要望を教えてください。

 2011 年から始めた統合運用管理は9 年目となり、そろそろ見直しの時期と思っています。世間では働き方改革としてAI やRPA など、積極的にICT を利活用するという動きがあります。統合運用管理も例外ではなく、活用していく必要があると考えています。
 AGS には、例えばバッチ処理をRPA で行うことやインシデント管理で蓄積されたデータを元にAI による障害予知や対応、ヘルプデスクやFAQ システムをAI チャットボットにするなど、様々な可能性について提案や助言を積極的に行っていただければと思います。
 また、AGS は、LGWAN-ASP 事業者でもあるので、事業者だからこそできるLGWAN を活用した運用の提案もお待ちしています。

統合運用管理とは

統合運用管理
 システムのバックアップや監視といった共通化できる運用や、複数の既存システムで個別に実施されている運用作業の統合管理、職員・市民からの問い合わせ対応を行うヘルプデスクやインシデント管理等を、サービスレベルに基づき一元的に管理する体制・仕組みのことです。統合運用管理の導入により、複数のシステムを統合運用管理事業者が一括して運用することで、職員様への安定したサービスが提供可能となります。