ビジネスプロセスを変革する
デジタルトランスフォーメーションとは

　デジタルトランスフォーメーション（ DX：Digital Transformation ）とは、2004 年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された、「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念と言われています。
　また、経済産業省が2018 年12 月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン（DX 推進ガイドライン）」によると、「DX とは企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

　これまでのIT 導入との違いとは

　データとデジタル技術の活用というと、これまでのIT 導入を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。それでは、IT 導入とDX では何が違うのでしょうか。
　例えば、ある書店で、パソコンでの書籍検索や電子マネー決済を導入しました。これは、DX といえるでしょうか。
　この場合、デジタル技術を導入してはいますが、出版社から取次店を経由して書店に書籍が置かれ、置かれた本を見て消費者が購入するといった従来のプロセスに変わりはありません。DX とは、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革することであり、この場合は業務効率化を目的としたIT 導入を実施したと言えます。
　一方、Amazon を代表とするネットストアでは、消費者はデジタル化された本のデータだけを見て購入し、宅配業者などによって手元に届けられます。この場合、従来の購入プロセスと大きく変わっていることが分かるでしょうか。このように経営やビジネスプロセスを変革してしまうのがDX となります。
　この他にも、Airbnb では、使っていない部屋を必要としている人に貸し出し、民泊を仲介するプラットホームで、これまでの宿泊サービスとは異なる現地の生活者の暮らしに近い宿泊体験を提供し、シェアリングエコノミーを推進しています。
　また、コマツは深刻な労働力不足の解消に、建機にセンサーやカメラを取り付けてデータを収集し、最終的に無人の建設現場を目指しています。

　DX への取り組みは長い旅路

　このように企業がDX を推進するには、最新のテクノロジーを導入するだけではなく、経営やビジネスプロセスを変革していく必要があります。
　しかし、ビジネス全体を大きく変えることは簡単ではありません。DX への取り組みは「デジタルジャーニー」と表現される程、企業にとっては長い旅路となるといわれています。