コラム
新リース会計基準の対象企業は? ~適用時期や実務への影響を解説~

目次
2024年に公表された新リース会計基準のニュースを目にして、自社が適用対象になるのかどうかと不安に感じている方は多いのではないでしょうか。とくに、これまで単なる費用として処理していた賃貸借契約などが貸借対照表に計上されるとなれば、経理実務や財務指標への影響は計り知れません。
この記事では、新リース会計基準の適用対象となる企業の条件から、実際の適用スケジュール、そして実務に与える影響について解説します。読み終わるころには、自社がいつまでにどのような準備を進めるべきかが明確になり、システム改修などの具体的な検討を始められるようになります。
新リース会計基準の適用対象となる企業
新リース会計基準は、日本国内にあるすべての企業に一律で適用されるわけではありません。主に上場企業や、それに準ずる規模を持つ大会社が強制適用の対象となります。どのような条件を満たした企業が対象になるのかを、以下の表に整理しました。
| 適用対象となる企業の区分 | 具体的な条件・範囲 |
|---|---|
| 上場企業とその関連 | 金融商品取引法の適用を受ける上場企業、およびその連結子会社や関連会社 |
| 会社法上の大会社 | 最終事業年度の貸借対照表において、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社 |
| 会計監査人設置会社 | 会計監査人を設置している会社(会社法上の大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のほか、任意で会計監査人を設置している企業を含む) |
| 賃貸借契約の多い非上場企業 | 大会社や会計監査人設置会社に該当する非上場企業(とくに飲食店、小売業、倉庫業、運送業など、賃貸借契約やリース契約が多い業種は影響大) |
| 中小企業 | 原則として適用は任意(従来通りの処理が可能)。ただし、将来のIPOを目指す場合や上場企業に買収された場合は対応が必要 |
それぞれの企業の詳細について、順番に確認していきます。
上場企業と連結子会社が対象
新リース会計基準の原則的な強制適用は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度から始まります。日本の企業で最も多い3月決算の企業を例に挙げると、2027年4月1日から始まる2028年3月期の決算から、新しい基準に従った会計処理が本格的に求められます。
この時期から逆算すると、実務上の準備期間はそれほど長く残されていないことがわかります。リース契約の件数が多い企業や、全国の拠点にリース資産が点在している企業では、適用開始の直前になってから情報の収集やシステム改修の準備を始めると間に合わなくなる危険性があります。
つまり、強制適用の時期が2027年であることを念頭に置き、今のうちから計画的にプロジェクトを進めることが重要です。まずは自社の決算期と照らし合わせ、具体的にどの年度から強制適用されるのかを社内で明確に確認してみてください。
2025年4月から早期適用可能
上場企業は金融商品取引法の適用を受けるため、新リース会計基準の強制対象となります。親会社が上場している場合、連結財務諸表を作成する際には連結子会社や関連会社も新しい基準に合わせた会計処理が求められます。ただし、子会社自身が法定監査の対象会社(大会社や会計監査人設置会社など)でない限り、子会社の個別財務諸表において新リース会計基準の適用は法令上強制されません。親会社の連結決算のために、連結調整として修正処理を行うことも可能です。
早期適用を選択するメリットとしては、海外の子会社や関連会社がすでに国際財務報告基準(IFRS)を採用している場合に、グループ全体で会計基準を統一しやすくなることが挙げられます。投資家や金融機関に対して、財務情報の透明性をいち早くアピールできるという側面もあります。
親会社と同じ精度のデータを提供できるよう、グループ全体で会計方針を統一することが連結決算上は求められます。ただし、子会社が法定監査対象でない場合、個別財務諸表での基準適用は任意であり、連結調整での対応も選択肢となります。グループ企業内での連携体制を早期に構築することが推奨されます。
親会社と同じ精度のデータを提供できるよう、グループ全体で会計方針を統一することが連結決算上は求められます。ただし、子会社が法定監査対象でない場合、個別財務諸表での基準適用は任意であり、連結調整での対応も選択肢となります。グループ企業内での連携体制を早期に構築することが推奨されます。
会社法上の大会社も該当
会社法で規定される「大会社」も、新リース会計基準の対象となります。具体的には、最終事業年度の貸借対照表において、資本金が5億円以上、または負債の総額が200億円以上の株式会社が該当します。創業間もない企業で資本金は数千万円であっても、金融機関からの大型融資や社債の発行により負債が200億円を超えている場合は大会社として扱われます。売上高や従業員数は判断基準に含まれないため、貸借対照表の数値を正確に確認することが重要です。自社が大会社の基準に触れていないかを、直近の決算書でしっかりとチェックしましょう。もし該当する場合は、速やかに対応プロジェクトを立ち上げる準備が必要です。
会計監査人設置会社も対象
会計監査人を設置している企業は、新基準に基づく監査が求められるため、すべて適用対象となります。具体的には、会社法で設置が義務付けられている監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社などがその筆頭です。また、法律上の義務はなくとも、定款によって任意で会計監査人を置いている場合も例外ではありません。たとえば、将来のIPO(新規株式公開)を見据えて、すでに監査法人と契約しているスタートアップ企業などがこれに該当します。「監査を受けている以上、新基準への対応は避けて通れない」という認識を持つことが重要です。まずは監査担当者と、今後の具体的なスケジュールについて早急に協議の場を設けるようにしましょう。
賃貸借契約の多い非上場企業も対象
新リース会計基準は、「上場企業だけが対象になる」と誤解されがちですが、決してそうではありません。非上場企業であっても、上記の大会社や会計監査人設置会社に該当すれば適用対象となります。
特に注意が必要なのが、店舗の賃貸借契約が多い飲食店展開企業や小売業、巨大な施設を借り受ける倉庫業、多数の車両をリースする運送業などです。これらの業種は、これまで単なる費用として処理していた賃貸借契約(不動産など)が新たに資産・負債としてオンバランス化(貸借対照表への計上)されるため、財務諸表に与えるインパクトが非常に大きくなります。自社が非上場だからと安心せず、適用要件を満たしていないか、また適用された場合の影響範囲を早めに確認しておくことが重要です。
中小企業の適用は原則任意
ここまで挙げた条件に該当しない多くの中小企業については、新リース会計基準の適用は任意とされています。したがって、これまで通り「中小企業の会計に関する指針」などに基づいた会計処理を継続することが可能です。たとえば、地域密着型の非上場の小売店などは、店舗の家賃や複合機のリース料を単なる費用として支払い処理し続けることができます。無理に新しい基準を導入する必要はないため、過度な事務負担を心配する必要はありません。ただし、将来的に上場を目指す場合や、上場企業に買収された場合は、その時点で新基準への対応が求められる点には注意が必要です。自社の将来の経営計画と照らし合わせて、適用時期を検討することが望まれます。
参考:新リース会計基準とは?企業に与える影響や必要な準備をわかりやすく解説! | 与信管理コラム | Neuro Watcher
新リース会計基準が適用される時期
対象企業に該当した場合、いつから新しい会計処理に切り替える必要があるのでしょうか。新リース会計基準には、強制的に適用される時期と、任意で前倒しできる早期適用の時期が定められています。具体的な時期については、以下の表を確認してください。
| 適用に関する区分 | 具体的な適用時期 | 対象となる会計年度の例 |
|---|---|---|
| 強制適用 | 2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から | 3月決算企業の場合、2028年3月期から一律に適用される |
| 早期適用 | 2025年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から | 準備が整った企業は先行して新しい基準を適用できる |
それぞれの適用スケジュールについて、詳しく解説します。
強制適用は2027年4月から
新リース会計基準の強制適用は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からと定められています。3月決算の企業を例に挙げると、2028年3月期の期首、つまり2027年4月1日から新しい会計処理をスタートしなければなりません。12月決算の企業であれば、2028年12月期の期首である2028年1月1日から開始する事業年度が最初の適用年度となります。
まだ猶予期間があるように感じられますが、契約の洗い出しやシステム改修には年単位の時間がかかるのが一般的です。そのため、期限から逆算して余裕を持ったスケジュールを組むことが不可欠です。とくに大規模な企業では、早急にプロジェクトチームを立ち上げることが成功の鍵を握ります。
早期適用は2025年4月から可能
準備が整っている企業に向けては、早期適用の道も用意されています。具体的には、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から、企業の判断で前倒しして新基準を導入することが可能です。たとえば、グローバル展開をしており、すでに海外の子会社がIFRS(国際財務報告基準)のリース会計基準を適用している企業などがあげられます。こうした企業は、グループ全体で会計基準を早く統一したほうが、管理業務が効率化されるというメリットがあります。自社の経理体制やグループ全体の状況を鑑みて、いつから適用を開始するかを経営陣と協議することが重要です。先行して導入することで、投資家に対して透明性の高い情報開示をアピールする効果も期待できます。
新たな基準による実務への主な影響
新リース会計基準が適用されると、経理財務の実務に大きな変化が訪れます。もっとも大きな変更点は、これまで貸借対照表に載っていなかったリース取引がオンバランスされることです。新旧の会計基準による違いと影響を、以下の表にまとめました。
| 影響が生じる項目 | 従来の会計基準の扱い | 新リース会計基準の扱い |
|---|---|---|
| 貸借対照表の表示 | オペレーティング・リースはオフバランス(費用処理)が可能 | 原則としてすべてのリースをオンバランス(資産・負債計上)する |
| 財務指標への影響 | リース取引が総資産に含まれないため影響は少ない | 総資産や負債が増加し、自己資本比率やROAが低下する傾向にある |
| 経理業務の負担 | ファイナンス・リースのみを細かく管理すればよかった | 賃貸借契約を含むすべての対象契約を洗い出し、継続的に管理する |
具体的にどのような影響が懸念されるのかを、詳しく見ていきます。
原則すべてのリースを資産計上
もっとも大きな実務への影響は、リース取引の処理方法が根本的に変わることです。これまでは、オペレーティング・リースに分類される契約は賃貸借処理として、費用のみを計上するオフバランス処理が認められていました。しかし新基準では、一定の短期リースや少額リースを除き、原則としてすべてのリースを貸借対照表に計上しなければなりません。たとえば、自社ビルではなく賃貸オフィスを利用している場合、その将来支払うべき家賃の総額を「使用権資産」および「リース負債」として認識する必要があります。さらに、営業用のリース車両や倉庫の賃貸借契約などもすべてオンバランスされるため、処理の前提が大きく覆ることになります。これまで気にしていなかった契約も、すべて会計上の管理対象になるということです。
自己資本比率などの指標が悪化
貸借対照表に多額のリース資産とリース負債が計上されることで、企業の財務指標には直接的な影響が及びます。総資産と負債が同時に増加するため、純資産が変わらなくても、総資産に占める純資産の割合である自己資本比率は低下します。たとえば、これまで自己資本比率が50%だった優良企業でも、オフィスの賃貸借契約がオンバランスされることで、比率が40%台に落ち込む可能性があります。
同様に、総資産を分母とするROA(総資産利益率)も悪化する傾向にあります。これらの指標は金融機関の融資判断や投資家の評価に直結するため、事前に影響をシミュレーションし、関係者へ説明できるようにしておくことが大切です。数値の悪化は経営の実態が悪くなったわけではなく、会計上のルール変更によるものだと周知する必要があります。
契約管理の業務工数が増加
すべてのリース取引をオンバランスするためには、対象となる契約を漏れなく把握しなければなりません。しかし、賃貸借契約は総務部、車両リースは営業部、IT機器は情報システム部というように、契約書が各部門に分散しているケースがほとんどです。たとえば、各拠点の支店長が独自に契約している小規模な倉庫や駐車場の契約まで、すべてを本社で収集し評価する必要があります。
これにより、経理部門だけでなく全社を巻き込んだ契約の洗い出し作業が発生し、莫大な労力がかかります。さらに、契約変更や解約のたびに会計システムで再計算を行う必要があり、導入後も日常的な管理工数が増加することは避けられません。新しい業務フローに耐えうる人員体制を確保しておくことが求められます。
対象企業が早期に進めるべき対応

自社が新リース会計基準の対象企業である場合、直前になって慌てないよう計画的な準備が必要です。とくに契約状況の洗い出しやシステムの改修には、想像以上の時間がかかります。経理部門が着手すべき具体的な対応ステップを、以下の表に示します。
| 対応のステップ | 具体的な作業内容 |
|---|---|
| 契約状況の把握 | 全社に点在するリース契約や賃貸借契約を洗い出し、契約内容をデータベース化する |
| 影響額のシミュレーション | 新基準を適用した場合の資産・負債の増加額を試算し、経営陣や金融機関に報告する |
| 業務フローの構築 | 新たな契約が発生した際の稟議プロセスや、会計システムへの入力手順を再構築する |
各ステップでどのような作業を行うべきかを解説します。
リース契約の現状を把握する
最初に取り組むべきステップは、社内に存在するすべてのリース契約および賃貸借契約を洗い出すことです。契約書の保管場所や管理責任者を特定し、どのような契約がどれだけあるのかをリスト化する必要があります。たとえば、全社の各部門に向けてアンケートを実施し、支払っている賃料やリース料のリストと実際の契約書を突合する作業を行います。この段階で、新基準の対象外となる短期リースや少額リースを切り分けることも重要です。正確な現状把握ができていなければ、あとの試算やシステム改修の前提が崩れてしまうため、もっとも慎重に行うべき作業です。他部門の協力を得るために、経営陣から全社へ重要性を発信してもらうとスムーズに進みます。
財務諸表への影響額を試算する
契約情報が集まったら、次に行うのは財務諸表へのインパクトの試算です。集約した契約データをもとに、新基準を適用した場合に総資産や負債がどれくらい増加するのかをシミュレーションします。たとえば、数億円規模のオフィス賃貸借契約が複数ある場合、貸借対照表の見栄えが劇的に変化するはずです。この試算結果は、自己資本比率の低下を懸念する経営陣や、融資の財務制限条項に抵触しないかを気にする金融機関への重要な報告材料となります。影響の大きさを早期に可視化することで、必要に応じた財務戦略の見直しを図ることができます。正確な試算を行うために、必要に応じて外部の専門家や監査法人の助言を仰ぐことも効果的です。
業務フローやシステムを改修する
最終的なステップとして、新しい業務フローの構築と会計システムの対応を進めます。これまでの経理処理では対応しきれなくなるため、リース資産を適切に計算して管理できるシステムへの移行や改修が不可欠です。たとえば、現場の担当者が新しく賃貸借契約を結ぶ際に、どのような情報を経理部に報告すべきかをマニュアル化し、社内に周知する必要があります。また、システムベンダーと協議し、自社の要件を満たすシステムがいつまでに導入できるかのスケジュールを確定させます。業務とシステムの両輪を整えることで、強制適用が始まっても混乱なく経理業務を回すことができるようになります。現場への教育期間も考慮して、運用テストを含めた余裕のある計画を立てることが重要です。
まとめ
最後に、本記事の要点をまとめると、以下の通りです。
- 上場企業や会社法上の大会社、会計監査人設置会社が強制適用の対象となる
- 飲食店・倉庫業・運送業など、店舗や車両の賃貸借契約が多い業種は財務諸表へのインパクトが非常に大きい
- 2027年4月以降開始の事業年度から、原則すべてのリース取引を貸借対照表に計上する必要がある
- 総資産と負債の増加にともない、自己資本比率やROAなどの財務指標が低下する可能性がある
- 全社的な契約の洗い出しやシステム改修など、年単位での計画的な準備が不可欠である
早期にリース契約の現状を把握し、新リース会計基準へのスムーズな移行を実現してください。
新リース会計基準の改正対応では、リース識別業務の効率化が求められています。
新リース会計基準の適用は、店舗や倉庫、車両などの賃貸借契約が多い飲食店や運送業の皆様にとっても、財務諸表への影響は決して無視できません。「OBC奉行シリーズ導入支援サービス」なら、複雑なリース資産のオンバランス処理も正確かつ効率的に管理できます。法改正に合わせたスムーズな業務フローの構築と、経理部門の負担軽減が実現可能です。本格的な適用が始まる前に、自社に最適なシステム環境への移行をおすすめします。