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ストレスチェックの集団分析とは?判定図の見方から活用事例まで解説

目次

定期的にストレスチェックを行う事は、従業員の心身の健康状態を守るうえでもちろん重要ですが、ストレスチェックの実施後に集団分析を行う事もまた重要です。

集団分析により、個人結果からだけでは見えない「職場環境」や「業務特性」による傾向が明らかになります。課題を明らかにしたうえで、会社としての「職場環境改善」や「業務改善」につながることが可能となり、メンタル不調者の抑制や業務効率の向上に役立てることが可能となります。

ストレスチェックの「集団分析」とは

企業でストレスチェックを実施した後、その結果を部署や年代などの集団ごとに集計・分析することを「集団分析」と呼びます。個人結果との違いは、以下の通りです。

比較項目 個人結果の場合 集団分析の場合
目的 個人のストレス状態の把握とケア 職場環境の課題抽出と改善
対象 従業員一人ひとり 部署や役職、年代ごとの集団
実施義務 50人以上の事業場では義務
(50人未満への拡大は2028年4月より施行)
現在のところ、努力義務
活用方法 産業医面談やセルフケアの促進  業務フローの見直しや人員配置の最適化、職場環境の改善

集団分析の目的

集団分析の主な目的は、組織の中に潜むストレスの要因を見つけ出し、職場環境の改善につなげることです。

個人の結果だけを見ていても、特定の部署に業務負荷が集中している事実には気付きにくいです。また、上司とのコミュニケーション不足が原因でストレスが高まっている、といった組織的な課題も見逃されがちになります。

このとき、集団のデータを俯瞰することで、どの部門にどのような支援が必要なのかを客観的に判断できるようになります。

以上のことから、集団分析は、従業員が健康的に働きやすい環境を整えるための重要なステップであると考えてよいでしょう。

集団分析を実施すべき理由

労働安全衛生法において、これまでストレスチェックの実施は従業員50人以上の事業場に義務付けられていました。さらに、2025年5月の法改正により50人未満の事業場への義務化も決定しており、2028年4月までにすべての事業場で実施が義務付けられます。

このようにストレスチェック自体の義務化が拡大する一方で、結果をまとめた「集団分析」については、現在のところ努力義務にとどまっています。

とはいえ、集団分析を行わなければ、せっかく集めたデータを組織改善に十分に活用することができません。

また、健康経営の観点からも、従業員の離職を防いで生産性を高めるためには、集団分析が重要です。分析を通じて職場の現状を正確に把握し、根本的な改善策を講じることが、今後より一層重要視されていきます。

ストレスチェックを集団分析する3つのメリット

集団分析を行うことで、企業は感覚や経験に頼らない客観的なデータに基づいた組織運営が可能になります。ここでは、具体的にどのような利点があるのかを詳しく解説します。

メリットの観点 期待できる具体的な効果 経営層への影響
リスクの可視化 全社的な健康問題の兆候を早期に発見 客観的なデータによる説得力のある現状報告が可能
課題の明確化 部署や役職ごとに異なる固有のストレス要因を特定 一律ではない現場に寄り添った柔軟な対応策を検討 
行動面への直結 業務量の調整や人員配置の見直しに対して、論理的なアプローチが可能 限られたリソースを適切な優先順位で、効果的な配分が可能 

組織全体の健康リスクを可視化できる

企業全体でどのような健康リスクを抱えているのかを、数値やグラフで可視化できる点は大きな利点といえます。

全社的な残業時間の多さがストレスにつながっているのか、それとも一部の職種に特有の心的負担が大きいのかをデータとして把握できます。これに加えて、経営陣に対して現状を報告する際にも、客観的な数値があることで説得力が増します。

また結果として、職場改善に向けた予算の確保や、全社的な施策の承認も得やすくなります。

部署ごとの課題が明確になる

部署や課といった単位でデータを細分化することで、それぞれの現場が抱える固有の課題を浮き彫りにできます。

例えば、営業部門では対人関係のストレスが高い傾向にある一方で、開発部門では業務量の多さが負担になっている、といった部署ごとの違いが見えてきます。

このような差異を把握することは、全社一律の対応による弊害を回避するために非常に重要です。

集団分析を通じて、部署や職種ごとの特徴をみることは、それぞれの現場の実情に寄り添った、効果的で無駄のない対策を検討する第一歩となります。

職場改善の具体的なアクションに直結する

職場が抱える課題が明確になれば、次にどのようなアクションを起こすべきかが自ずと見えてきます。

業務量に課題がある部署には人員補充や業務フローの見直しを提案できます。人間関係に課題がある部署であれば、管理職向けのコミュニケーション研修を実施するといった具体策を講じることができます。

実際のデータを基に論理的なアプローチが可能になるため、より効果的な職場改善へと繋げやすくなります。

厚生労働省が推奨する「仕事のストレス判定図」の見方

集団分析を行う際、厚生労働省は「仕事のストレス判定図」を使用することを推奨しています。この判定図は、職場のストレス要因を視覚的に評価するための有効なツールといえます。

判定図の種類 主な評価軸 健康リスク上昇の要因
量-コントロール判定図 仕事の量的負担と裁量権のバランス 業務量が多く、自分で進め方を決める裁量が少ない状態
職場の支援判定図 上司や同僚からのサポート体制 職場内でのコミュニケーションや周囲からの支援が乏しい状態

参考:厚生労働省「職場結果「仕事のストレス判定図」について(PDF)」

量-コントロール判定図の評価

量-コントロール判定図」は、仕事の量的負担と仕事に対する裁量権(コントロール度)のバランスを評価する指標です。

縦軸に「仕事のコントロール度」、横軸に「仕事の量的負担」をとり、グラフ上に結果をプロットして確認します。仕事の量が多く、かつ自分自身で仕事の進め方を決める裁量が少ない状態にある場合、健康リスクが高まると判定されます。

この図を活用することで、業務負荷の軽減や裁量権の付与といった具体的な改善策を検討しやすくなります。

職場の支援判定図の評価

職場の支援判定図」は、上司や同僚からどの程度サポートを受けられているかを評価する指標となります。

縦軸に「同僚の支援」、横軸に「上司の支援」をとり、それぞれの度合いを図式化して全体像を把握します。上司や同僚からのサポートが少ない職場ほど、心理的な負担を一人で抱え込みやすくなる傾向があります。

結果として健康リスクが上昇するため、職場内のコミュニケーション活性化や相談体制の構築が必要かどうか判断できます。

総合健康リスク

総合健康リスク」とは、職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に判断した数値です。

「量-コントロール判定図」と「職場の支援判定図」から得られた数値を掛け合わせて算出され、全国平均を100として表します。

例えばこの数値が120の場合、標準的な職場と比べて心理的ストレスや疾病休業の発生リスクが1.2倍高い状態であることを示しています。リスクが120を超えるような部署があれば、優先的に職場改善の対象として対策を講じることが推奨されます。

ストレスチェック集団分析の具体的な手順

実際に集団分析を進める際には、適切な手順を踏むことが求められます。正しいフローで実施することで、結果の信頼性を担保し、円滑な改善活動へとつなげられます。

手順のステップ 実施内容の概要 注意すべきポイント

STEP1
分析単位の決定

部署や役職などデータを集計する区分を決める 個人が特定されないよう原則として10人以上の集団で設定する

STEP2
データの集計

ストレス判定図などを用いて数値をグラフ化する 客観的な視点を保ち、感情や先入観を交えずにデータを整理する

STEP3
結果の共有

経営陣や衛生委員会に結果と改善策を報告する 数値の報告だけでなく、背景にある要因の考察を含めて共有する

STEP1|分析単位の決定

集団分析を行う際は、まず部署や役職、年代などの「どのような単位でデータを集計するか」を決定します。

ここで注意しなければならないのが、集計対象となる集団の人数制限についてです。労働安全衛生法に基づく指針では、個人が特定されることを防ぐため、原則として10人未満の集団での集計は避けるべきであるとされています。

そのため、10人未満の部署を分析する場合は、他の部署と合算して集計するか、あらかじめ対象となる従業員全員から同意を得ることが求められます。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 実施マニュアル(PDF)」

STEP2|データの集計

分析単位の決定後、回収した回答をもとにデータの集計を行います。

集計の際は、厚生労働省が推奨する「健康リスク判定図」などを用いて、仕事の負担度やコントロール度、周囲の支援状況などの数値をグラフ化し、視覚的に把握しやすくするのが一般的です。

集計やグラフ化のプロセスにおいては、担当者の先入観を交えず、客観的な視点で正確にデータを整理・可視化することが求められます。

関連記事:生成AIで業務効率化を実現!明日から使える活用法と成功事例を解説 | AIコラム

STEP3|結果のフィードバックと衛生委員会での共有

データの集計と分析が完了したら、その結果を経営陣や各部署の責任者にフィードバックします。

また、従業員50人以上の事業場に設置が義務付けられている衛生委員会においても、集団分析の結果を共有し、職場環境の改善に向けて調査・審議することが推奨されています。

そして、今後の対策について労使間で協議を進めていくことが重要です。分析結果は、数値をただ報告するだけでなく、どのような要因でストレスが高まっているのかという背景要因を考察し、具体的な改善案とともに共有すると良いでしょう。

集団分析の結果を活用した「4つのケア」の推進

集団分析で課題が明確になった後は、企業は厚生労働省が提唱する「4つのケアセルフケアラインケア事業場内産業保健スタッフ等によるケア事業場外資源によるケア)」に沿った対策を推進します。

この推進活動を通じて、集団分析で特定された「課題を抱える部署」に対し、管理者が業務量を見直す(ラインケア)とともに、従業員自身がセルフケアを見直すことで、組織全体のストレス要因(ストレッサー)を根本から減らすことができます。

そこで、本セクションでは、組織全体のメンタルヘルスを支えるための基本的な枠組みについて解説します。

参考:厚生労働省「職場における心の健康づくり」

セルフケアとラインケアの支援

セルフケア」とは、「従業員自身が自分のストレス状態に気づき、予防や対処を行う取り組み」を指します。企業としては、ストレスとの付き合い方を学ぶ研修を提供するなどの支援が求められます。

これに対して「ラインケア」は、「現場の管理職が日常的に部下の様子を観察し、必要に応じて業務調整や相談に応じる取り組み」です。集団分析で特定の部署に課題が見つかった場合、まずはその部署の管理職に対するラインケア研修を強化することが有効な対策となります。

基本的にはこれら2つのケアが、日常的なメンタルヘルス対策の土台として機能していきます。

専門家との連携や外部資源による支援

セルフケアとラインケアだけでは対処しきれない課題に対しては、事業場内の産業保健スタッフによるケアが重要になります。具体的には、産業医や保健師といった専門家が、より医学的な見地から職場環境の評価や個別の指導を行います。

また、社内の人間には相談しづらいという従業員のために、事業場外資源によるケアを活用することも推奨されています。外部の専門機関やカウンセラーと契約することで、従業員が匿名で安心して相談できる窓口を提供できます。

これらの専門的な支援を組み合わせることで、より強固なサポート体制を構築することができます。

参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

集団分析を職場改善に活かした具体例

実際に集団分析のデータを活用し、職場環境の改善に成功した企業の事例をご紹介します。具体的な取り組みを知ることで、自社での活用イメージが湧きやすくなるはずです。

ダイキン工業株式会社|滋賀製作所における改善事例

製造業の大規模事業場であるダイキン工業株式会社の滋賀製作所では、ストレスチェックの集団分析を効果的に活用しています。

具体的には、繁忙期(夏前)と閑散期の年2回調査を実施して、繁忙期には「仕事量」、閑散期には「職場の人間関係」がストレス反応に結びついていることを把握しました。

この分析結果をもとに、管理職・グループリーダー・一般社員への報告会を実施し、職場ごとの課題改善の話し合いや、管理職向けの効果的な褒め方・𠮟り方などのラインケア研修を実施しています。

この取り組みにより、メンタルヘルス改善意識調査の要望率が大幅に低下し、各職場で環境改善のPDCAサイクルが回り始めました。

参考:ダイキン工業株式会社 滋賀製作所(滋賀県草津市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

ストレスチェックの集団分析を成功させるためのポイント

集団分析を実りあるものにするためには、いくつかの気をつけるべきポイントがあります。ここでは、データの取扱いや、分析後のフォローアップ体制について解説します。

成功に向けたポイント 具体的なアクション 避けるべきリスク
情報保護の徹底 衛生委員会でデータ開示の範囲とルールを事前に明確化する 意図せず個人が特定され、従業員からの信頼を失ってしまうこと
実行体制の構築 経営層や現場を巻き込み、改善の計画を立てる 分析結果をただ保管するだけで、具体的な改善活動が行われないこと

個人情報の保護と開示範囲のルール設定

ストレスチェックの結果は、従業員の健康に関わる極めてセンシティブな個人情報です。

そのため、集団分析のデータを社内で共有する際には、それが個人の特定につながらないよう細心の注意を払わなければなりません。あらかじめ衛生委員会などで、「どの階層の管理職までデータを開示するのか」といったルールを、明確に定めておく必要があります。

情報の取り扱いを誤ると、従業員からの信頼を損ない、次回以降のストレスチェックへの協力が得にくくなるおそれがあります。

分析結果を放置せず施策へつなげる体制づくり

集団分析を行ったものの、結果をファイルに綴じて保管するだけで終わってしまうケースも少なくありません。

分析結果は、あくまで職場改善のスタートラインです。分析によって明らかになった課題を具体的な施策へと落とし込み、着実に実行できる体制を整える必要があります。そのためには、人事部門だけでなく、経営層や各現場の管理職を巻き込むことが、成功のカギとなります。

「誰が」「いつまでに」「どのような改善策を実施するのか」という計画を立てて実行するサイクルを回すことが、組織風土の根本的な改善につながります。

まとめ

最後に、本記事の要点をまとめると、以下の通りです。

  • 集団分析は、職場の課題を可視化して具体的な環境改善につなげる役割を持つ
  • 厚生労働省が推奨する「仕事のストレス判定図」を活用して、健康リスクを数値として算出できる
  • 分析後は結果を放置せず、経営層や現場と共有して具体的な施策へと落とし込む

これらのポイントを押さえて、データを活用した健康的な職場づくりを進めていきましょう。

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