スコアリングモデルの継続的改善

  • 「企業情報・格付情報照会サービス」では、経済状況によって変化する企業倒産の動向を反映させるため、格付判定の中枢部である信用スコアリングモデルの見直しを毎年行っております。
  • 2024年10月18日(金)を以って、以下の通り、スコアリングモデルを新しいモデル(2024年モデル)に移行します。

1.新モデルへの移行スケジュール

  • システムメンテナンスによるサービス提供の休止
  • 新モデルによるサービスの再開

2024年10月17日(木) 19:00から 翌18日9:00まで

2024年10月18日(金) 9:00から

2.現行モデルの評価(下表参照)

    直近12ヶ月(2023/9~2024/8)

    格付 1 2 3 4 5 6 7 8 9 合計
    倒産率 0.01% 0.01% 0.02% 0.05% 0.09% 0.19% 0.31% 0.59% 1.37.% 0.20%
    倒産件数 2 7 29 96 201 411 500 490 492 2,228
    平均企業数 25,044 70,666 120,799 175,737 219,100 221,973 162,644 82,566 35,962 1,114,490

    注)倒産率実績を算出したデータ(企業数、倒産件数)の詳細については、ホームページの「過去の倒産実績」をご参照下さい。

    注)倒産率の対象となる企業は企業情報・格付情報照会サービスで格付可能業種と期間のみです。

     

  1. 株式会社東京商工リサーチ(以下TSR)の全国の企業倒産状況(負債額1,000万円以上)によると、倒産件数は2021年までは減少傾向にありましたが、2022年には6,428件、2023年は8,690件、2024年8月現在では6,600件と前年と比べて増加のペースが上がっています。
  2. 「企業情報・格付情報照会サービス」で格付可能な企業の直近12か月間の倒産企業数と倒産率は上の表のとおりとなっています。件数、率共に昨年同時期を上回っています。
  3. 「企業情報・格付情報照会サービス」で格付可能企業の過去10年間の倒産発生率は減少傾向が続いていましたが、2022年以降は増加傾向にあります。具体的には、倒産件数は2022年に1,369件、2023年に1,957件となり、2024年は8月までにすでに1,534件に達しています。この背景には、景気の変動や円安、金利上昇、人件費高騰などの外的な経済要因が影響している可能性があります。
      

3.全国倒産状況

TSRの倒産情報によれば、新型コロナ関連の経営破たんは2024年8月で全国累計で6,892件に達しました。コロナ関連倒産は2020年2月以降急増し、2021年から2022年にかけてピークを迎えましたが、2023年以降は徐々に減少傾向にあります。

一方で、コロナ関連倒産の減少にもかかわらず、全体の倒産件数は増加傾向にあります。特に、2023年3月以降は月次倒産件数が800件を超える月が続き、再び増加の兆しが見られています。 その要因の一つとして、円安の影響が考えられます。輸入品やエネルギー資源のコスト上昇による物価高騰により、中小企業や輸入依存の高い業種が深刻な影響を受けています。TSRの調査によると円安関連倒産2024年上半期は前年同期の1.5倍増となっています。また、人件費高騰、金利上昇など、すでに経営が厳しい状況にあった業種(運送業、建設業、飲食業など)は、追加的な負担によって倒産リスクがさらに高まっていると予測されます。

4.新モデル(2024年モデル)の特徴および改善点

上記の評価結果を踏まえ、以下の通りスコアリングモデルの変更を行いました。

  1. 2024年に入り全体の倒産数は増加傾向にありますが、コロナ関連倒産は減少しています。これは、外出自粛の緩和やインバウンド、さらに円安の影響で業績が回復する企業も出てきました。しかし、業績回復の見通しが立たないまま「ゼロゼロ融資」等の返済時期を迎え、資金調達に苦労している企業も見受けられます。さらに、円安は燃料や原材料費のコスト増加を引き起こし、人件費高騰、金利の上昇といった要因から資金調達への影響も懸念されます。これらの状況を踏まえ、モデル全体としては自己資本、流動性、営業キャッシュフロー、支払余力などを重視して今年度のモデルを構築しました。なおコロナ関連で一部業種については厳しい評価となっておりましたが、その部分はやや緩和されております。
  2. 倒産全体(法人倒産のみ、個人事業主の倒産は除く)をみると、前年同期を上回る傾向が続いております。昨年の倒産件数は8,690件でしたが、2024年1月から8月までには既に6,607件に達しています。このペースで推移すると、2024年は10,000件に達する可能性もあると予測し、格付判定の基準を設定しました。
  3. 新モデルでは現行モデルと比較して51.5%の企業に変化があります(41.5%が1段階の変化)。その比較については下記のとおりです。

格付が改善する企業・・・28.5%(うち1ランク改善23.4%)

格付に変化ない企業・・・48.5%

格付が悪化する企業・・・23.0%(うち1ランク悪化18.1%)

業種(6業種分類)別現行モデルとの判定結果比較表

業種 建設 製造 小売 サービス その他 全体
格付が2段階以上改善 4.4% 4.3% 4.9% 6.9% 4.9% 5.5% 5.1%
格付が1段階改善 23.4% 22.7% 22.6% 25.7% 22.3% 23.9% 23.4%
格付に変化なし 55.6% 46.6% 45.8% 40.9% 45.8% 47.3% 48.5%
格付が1段階悪化 14.1% 19.9% 20.5% 19.5% 21.3% 18.3% 18.1%
格付が2段階以上悪化 2.5% 6.5% 6.2% 7.0% 5.7% 5.0% 4.9%

5.新旧スコアリングモデルの詳細比較

2024/9 評価用データによる比較

格付 1 2 3 4 5 6 7 8 9 合計
登録企業数(①)
(2024/9)
2023年モデル Aモデル 11,553 27,268 44,833 61,637 76,663 58,808 43,967 23,570 15,919 364,218
Bモデル 14,305 43,389 77,492 1153,20 144,374 163,617 119,651 59,540 20,282 757,970
A+B(①) 25,858 70,657 122,325 176,957 221,037 222,425 163,618 83,110 36,201 1,122,188
2024年モデル Aモデル 11,123 31,784 47,058 61,008 73,809 60,209 41,853 23,947 13,427 364,218
Bモデル 15,798 47,505 80,043 117,975 146,734 147,569 116,195 64,342 21,809 757,970
A+B(①) 26,921 79,289 127,101 178,983 220,543 207,778 158,048 88,289 35,236 1,122,188
倒産件数(②)(2023/9~2024/8) 2023年モデル(②) 2 7 29 96 201 411 499 489 486 2,220
2024年モデル(②) 0 6 37 112 235 365 487 476 502 2,220
倒産率(②÷①) 2023年モデル倒産率 0.01% 0.01% 0.02% 0.05% 0.09% 0.18% 0.30% 0.59% 1.34% 0.20%
2024年モデル倒産率 0.00% 0.01% 0.03% 0.06% 0.11% 0.18% 0.31% 0.54% 1.42% 0.20%

Aモデル:財務情報・企業情報に基づいて判定

Bモデル:企業情報に基づいて判定