スコアリングモデルの継続的改善
- 企業情報・格付情報照会サービスでは、経済状況によって変化する企業倒産の動向を反映させるため、格付判定の心臓部である信用スコアリングモデルの見直しを毎年行っております。
- 2023年10月20日(金)を以って、以下の通り、スコアリングモデルを新しいモデル(2023年モデル)に移行します。
1.新モデルへの移行スケジュール
- システムメンテナンスによるサービス提供の休止
- 新モデルによるサービスの再開
2023年10月19日(木) 19:00から 翌20日9:00まで
2023年10月20日(金) 9:00から
2.現行モデルの評価(下表参照)
- 株式会社東京商工リサーチ(以下TSR)の全国の企業倒産状況(負債額1,000万円以上)によると、倒産件数は2020年に7,773件、2021年に6,030件と減少傾向にありましたが、2022年には6,428件、2023年8月時点では5,560件と増加傾向が見られます。
- 企業情報・格付情報照会サービスで格付可能企業の直近1年間の倒産件数は1,728件で、昨年同期の1,348件、一昨年同期の1,077件と比べて増加しており、倒産率も増加傾向にあります。
- 過去10年間の倒産発生率は減少傾向が続いておりましたが、直近12か月間の集計ではゆるやかですが増加となっています。(2014年~2022年は1~12月の集計、2023年は2022/09-2023/08の直近12か月間の集計)
直近12ヶ月(2022/9~2023/8)
格付 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
倒産率 | 0.01% | 0.02% | 0.03% | 0.06% | 0.09% | 0.16% | 0.25% | 0.40% | 0.83% | 0.16% |
倒産件数 | 3 | 11 | 32 | 113 | 197 | 359 | 397 | 297 | 319 | 1,728 |
平均企業数 | 22,468 | 70,735 | 117,566 | 176,463 | 216,480 | 218,284 | 161,473 | 75,018 | 38,413 | 1,096,900 |
注)倒産率実績を算出したデータ(企業数、倒産件数)の詳細については、「過去の倒産実績」をご参照下さい。
注)倒産率の対象となる企業は企業情報・格付情報照会サービスで格付可能業種、期間のみであります。
3.新型コロナウイルス関連倒産状況
TSRの情報によれば、2023年8月末現在、新型コロナ関連の経営破たんは全国で累計6,892件となり、月別では12ヵ月連続で月間200件を超える数字を記録しています。7月以降2ヵ月連続で前月を下回っておりますが、コロナ関連倒産が倒産全体に占める割合は依然として40%近くの高水準を維持しています。
コロナ禍において、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)は倒産を抑制する要因となりましたが、その副作用として、過剰な債務を抱えた企業が多く、業績回復の見通しが立たないまま、返済時期に直面しています。さらに、円安進行による原材料高騰や物価上昇なども影響し、返済資金の調達が難しい事例も増えています。実際に、ゼロゼロ融資利用後の倒産件数は2020年からの累計で1,025件に達し、2022年8月以降、13ヵ月連続で毎月40件以上の倒産が発生しています。
4.業種別倒産状況
中小企業庁(TSR調査)の業種別倒産数の推移(業種は企業情報・格付情報照会サービスで定義している6業種に分類)をみると飲食・宿泊業を含むサービス業が件数では一番多く、次いで建設業となっています。2023年に入り各業種とも倒産数の増加傾向が読み取れます。
5.新モデル(2023年モデル)の特徴および改善点
上記の評価結果を踏まえ、以下の通りスコアリングモデルの変更を行いました。
- アフターコロナの中で、宿泊・旅館業、旅客運送業などインバウンドを中心とした需要回復など好材料はでてきましたが、倒産件数は700件を超える月が4ヵ月続いてます。 さらに、ゼロゼロ融資の利用後の返済に加えエネルギーを含む物価の上昇や人件費高騰などが重荷となり、事業継続を断念する企業も増えています。そのため、企業の安全性(支払い能力や資金繰り)を重視し、今年度のモデルを構築しました。
- 倒産全体をみると前年同期を上回る傾向が続いております。昨年度の6,428件から2023年8月までには既に5,560件と増加しており、2023年は8,000件程度(法人倒産のみ、個人事業主の倒産は除く)で推移するものと予測して格付判定の基準を設定しました。
- 新モデルでは現行モデルと比較して61.5%の企業に変化があります(42.2%が1段階の変化)。その比較については下記のとおりです。
格付が改善する企業・・・30.8%(うち1ランク改善21.4%)
格付に変化ない企業・・・38.5%
格付が悪化する企業・・・30.6%(うち1ランク悪化20.7%)
業種(6業種分類)別現行モデルとの判定結果比較表
業種 | 建設 | 製造 | 卸 | 小売 | サービス | その他 | 全体 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
格付が2段階以上改善 | 5.7% | 9.8% | 9.3% | 11.9% | 11.9% | 11.0% | 9.4% |
格付が1段階改善 | 21.0% | 22.2% | 22.0% | 20.9% | 20.9% | 21.7% | 21.4% |
格付に変化なし | 44.4% | 38.2% | 36.9% | 33.1% | 32.3% | 38.4% | 38.5% |
格付が1段階悪化 | 19.9% | 20.6% | 21.5% | 21.4% | 22.9% | 20.0% | 20.7% |
格付が2段階以上悪化 | 8.9% | 9.2% | 10.3% | 12.7% | 12.0% | 9.0% | 9.9% |
6.新旧スコアリングモデルの詳細比較
2023/9 評価用データによる比較
格付 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
登録企業数(①) (2023/9) |
2022年モデル | Aモデル | 8,171 | 24,621 | 42,080 | 58,913 | 75,176 | 60,387 | 40,551 | 20,968 | 17,490 | 348,357 |
Bモデル | 14,579 | 45,779 | 75,126 | 118,380 | 143,477 | 160,425 | 121,936 | 53,207 | 21,046 | 753,955 | ||
A+B(①) | 22,750 | 70,400 | 117,206 | 177,293 | 218,653 | 220,812 | 162,487 | 74,175 | 38,536 | 1,102,312 | ||
2023年モデル | Aモデル | 10,612 | 25,972 | 41,752 | 59,714 | 74,436 | 56,872 | 41,612 | 22,759 | 14,628 | 348,357 | |
Bモデル | 14,175 | 43,510 | 76,881 | 113,215 | 143,342 | 162,522 | 119,084 | 60,227 | 20,999 | 753,955 | ||
A+B(①) | 24,787 | 69,482 | 118,633 | 172,929 | 217,778 | 219,394 | 160,696 | 82,986 | 35,627 | 1,102,312 | ||
倒産件数(②)(2022/9~2023/8) | 2022年モデル(②) | 3 | 11 | 32 | 113 | 197 | 359 | 397 | 297 | 319 | 1,728 | |
2023年モデル(②) | 0 | 6 | 19 | 79 | 182 | 266 | 406 | 398 | 372 | 1,728 | ||
倒産率(②÷①) | 2022年モデル倒産率 | 0.01% | 0.02% | 0.03% | 0.06% | 0.09% | 0.16% | 0.24% | 0.40% | 0.83% | 0.16% | |
2023年モデル倒産率 | 0.00% | 0.01% | 0.02% | 0.05% | 0.08% | 0.12% | 0.25% | 0.48% | 1.04% | 0.16% |
Aモデル:財務情報・企業情報に基づいて判定
Bモデル:企業情報に基づいて判定